なぜプレゼンやスピーチでアガってしまうのか? それはもう一人の自分が納得していないから
出来るだけ人前に立ちたくないと思っていました。
苦手なのは、スピーチ、発表、質疑応答での質問、乾杯の音頭など。
可能な限り避けてきました。
以前、大勢の前で話しているとき、頭が真っ白になってしまったことがあり、その恐怖がトラウマになり苦手になってしまったのです。
しかし、あるとき、どうしても人前に立たなくてはならなくなったことがありました。
よくアガリ対策には「リハーサルをたくさんすること」とあり、リハーサルを行っていたのですが、伝わるのかどうか、とても不安でした。
よく、極度の緊張で泣いてしまう女性を見た事があり、「自分もそうなってしまうのではないか?」「出来る事なら泣いて逃げ帰りたい」、とまで思っていました。人から「始まってみると大丈夫だよ」とよく言われますが、これも信じられませんでした。
真っ青になってヨロヨロと人前に出たのですが、そのとき、追いつめられ、火事場の馬鹿力で眠っていた声にスイッチが入ったのです。
普段とは違う、良く響く低い声で話し始めていました。
それは、「横隔膜をしっかり使って話す方法」の発見です。
横隔膜をしっかり使う方法は、声楽的ボイストレーニングのときに練習しており、土壇場でそれを応用させればよいということが良くわかりました。
一度入ったスイッチは、自分の人格まで変えてしまいました。緊張感は持続しているのですが、次の言葉が自然にわき上がってきて話せているのです。
「しっかり話せている自分」を、もう一人の自分が見ることで、やっと大丈夫だと思えたのです。
もう一人の自分とは、潜在意識の自分。
このもう一人の自分が深く納得しないと、人は心から動けません。
もう一人の自分は、会場のあらゆるお客さんの誰よりも、ごまかしがきかず、ピュアで厳しいお客さんです。
このお客さんが、「とりあえずヨシ!」と言ってくれることが、自分の力を発揮する方法であり、一番のアガリ防止です。
プレゼンやスピーチでは、普段の仕事や勉強、そして準備も大切ですが、最後は会場のお客さんと、もう一人の自分にしっかり伝える声を持ち、自分自身が深く納得することで、体が自然に動くようになるのです。
普通の方は、スピーチ内容の準備段階までは、ほとんどの方がしっかりなさっているのではないかと想像しています。
ただ、最後の「しっかり伝えるための声」までやっている方はほとんどいらっしゃいません。
先日、ある研修関係の方とお話していたときも、
「内容は持っていても、伝わる声を持っている人はほとんどいない。そして、ほとんどの方は自分が出来ていないことさえも気がついていない。気がついて実行することだけで、大きな差別化になるはずだ」
とおっしゃっていました。
これからは、声のトレーニングをしている人としていない人で大きく差がついてくるのではないかと思っています。