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ライフワークとしての学びを考えます。

「うるさいな、余計なお世話だ。指示できるのは上司だけなんだ」真実を語ろうと言う人ほど起こる化学反応

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昨日の記事にも書きましたように、チームでの対話を深めることが、良い製品づくりに必要です。

「風通しのよいチームに」
「仲間が自由に話し合えるような環境をつくること」
そのためには、「みんなでお互い率直に意見を言い合えることが必要だ」

合唱団でも、そうおっしゃる方がいます。
ただ、本当に人と人の境界線を越えて上手く行く例は稀です。

ハーヴェイ・セイフスター、ピーター・エコノミー著「オルフェウスプロセス」では、アメリカのニューヨークを本拠地とするオルフェウス室内管弦楽団という指揮者のいないオーケストラのマルチ・リーダーシップ・マネジメントについて書かれています。

ここでは、ある「伝統的なオーケストラ」における印象的な場面が描かれています。

    ・・・・(以下引用)・・・・

「例えば、私がニューヨーク・フィルで主席ヴィオラ奏者を務める場合、打楽器奏者に『ところでちょっと遅いな』とか『うるさすぎる』とは言えないだろう。習慣として、それは私の役割ではないからだ。実際、おそらくはこう言い返されるのが落ちだ。『うるさいな、余計なお世話だ。指示できるのは指揮者だけなんだ』」
(中略)
組織の上下関係や境界線を越えられるかどうかは、とても重要なことだ。これができるからこそ、オルフェウスの個々のメンバーは、製品の質にたいして自らの責任を果たせるし、他を十分に支援し、メンバー同士が補完しあえるのである。

    ・・・・(以上引用)・・・・


オルフェウスは、「境界線を越えることは、製品や作品の質に対する責任である」と言い切ります。

しかし、本の中で「真実を話すことは抵抗のない人でも、真実を聞かされることには複雑な感情を抱く。これは化学反応のようなものだ」と、ニッサン・デザイン・インターナショナル(カリフォルニア州サンディエゴ)の社長の地位を退いたジェリー・ハーシュバーグは語っています。

合唱団でも、音楽家のグループでも、起こることは企業と同じです。

結局、人に対しては「あなたのため」「チームのため」と言って本当のことを言い、「みんなオープンに意見しあおう」と言う人でも、いざ自分が本当のことを言われると、大いに困惑し、傷ついて、怒りだし、挙げ句の果てには責任者に「指示できるのは指揮者だけにすべきだ!」と訴える例もみてきました。しかしこれも「化学反応」だと思えば納得がいきます。

合唱団でも、仲間で真実の意見を出し合えるのは難しいという経験を数多くしてきました。


私が、「合唱チームビルディング」にこだわる理由がそこにあります。

「合唱チームビルディング」を行う初期の頃に気がついたことがあります。

ブレインストーミングを行うために、パートごとにグループ形成をします。
そうすると、グループの中に会社の社長や上司、または仕事で発言力の強い方が含まれていると、そのグループはとたんに寡黙になり、意見が出なくなります。皆さんの目線を観察すると、下を向きながら左右をチラチラ見ているのです。あきらかに誰かをうかがっています。
あまりに会議が活性化していないのを見かねて、私が発言をうながしにまいりますと、社長さんが喜ぶような意見をいいがちで、実際、作品の質を上げるような良いものではありません。

また、社長さんが、「ウチのパート(テノール)うるさすぎないか?!」などと言おうものなら、その後の全体合唱練習で、必要以上にテノールの元気がなくなってしまっているのです。
社長さんのご意見は確かに正しいものでした。しかし影響力が大きく、良い意味で素晴らしい会社なのですが、皆さんの思考が停止してしまうという落とし穴もあることを痛感しました。

逆に、グループで同じような職位の方が多いと、活発に意見が出て、音楽家でもなく合唱経験のほとんど無い方でも、作品や演奏に対する適切な意見がのべられ、驚くことがあります。

例えば、「私たちのパートは5小節目から単に音をなぞっているだけだった。次からは音楽に合うよう爽やかな風が吹き抜けるように表現したい。そのためには声を張り上げないで歌いたい」など、高度な意見が出るのです。
また、話し合われたあとは、指揮者が指示を行うより、全員が心から納得し良い方向に迅速に対応されている柔軟性が感じられます。

そこで気がついたことは、垂直型は迅速に対応できないし、チームが心から動かないということがあるのだということでした。

私はチームの「水平化」が必要だと思いました。

つまり、そのためには、境界線を越えていかなくてはなりません。

平等なチームワークを育てるために「合唱チームビルディング」では何をするのか。
ある方法を思いつきました。

これについてはまた次回。


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