心から人の成長を支援することは自分の心を見つめることにつながる
昨日、7月9日、都内のホールで、音大の教授をお招きし、ベートーヴェンのピアノソナタの演奏法についてのセミナーを開催してまいりました。
そのとき、講師をしてくださった先生が、良い話をしてくださいました。
ベートーヴェンは、生涯に渡って32曲のピアノソナタを作曲し、自身のライフワークとしていました。
ベートーヴェンのピアノソナタを見ると、何年も先に完成される「運命」や「第九」など、すでに構想をされていたことがわかります。
ピアノソナタを見れば、そのときベートーヴェンが何を感じて何を考えていたのか分かるほどなのです。
ベートーヴェンの初期のソナタは、師匠である当時の人気作曲家ハイドンの影響を大きく受けていました。
しかし、あるところから、ベートーヴェンはハイドンの言うことを守らなくなります。
今まで誰も考えつかかったような大胆な手法や構想を用いて作曲し始める。そして、その曲がまたよく売れたのです。
ハイドンは、そのことが面白くなく、一抹の寂しさも感じたと言われています。
ハイドンほどの人でもそう思った。
人の心とはそれほど単純なものではないのです。
しかしその後、なんと、ハイドンは、ベートーヴェンの真似をし始めるのです。
そして新たな境地を切り開きます。
私は、そこがハイドンのすごいところだと思いました。
普通だったら、嫉妬して終わってしまう。自分のエゴやプライドが邪魔をして真似することなどしないでしょう。
しかし、ハイドンはハイドンの中で自分の気持ちと和解した。
そこが周囲から「パパ・ハイドン」と言われて慕われていた人間性の深みを感じます。
自分も、ご縁あって人の成長を支援する立場となることもあります。
当然、自分よりはるかに素晴らしくなることもある。
人を支援するときの覚悟というものをハイドンから感じることが出来ました。
心から人の成長を願うこと。
それは自分の心との和解、そして、それこそ自分の成長なのだと思いました。