声が良い人って意外に聞き取りにくいことがあります
映画「テルマエ・ロマエ」をApple TVで観ました。
主役の阿部寛さんも熱演で、素晴らしいと思いましたが、私が一番気になったのは、ローマの皇帝役でご出演なさっていた市村正親さんの声です。さすが舞台で鍛えた声。声に神々しさを感じ、まさにリーダーの声でした。
市村さんは、役者や歌手としては決して「美声」というわけではありません。
しかし、腹式呼吸を使い低く響く強さを感じさせる声で話していました。きっと、ボイストレーニングをされて、さらに有り余る演技力でカバーしているのだと思います。
私の身近でも、良い声をお持ちの方がいます。
でも、なぜか人前でしゃべるときに「聴こえないのでもっと大きな声でお話しください」と言われるらしいのです。
あるとき、その方の講演を聴きにいったのですが、なるほどと思いました。
これでは聴こえません。
声は素晴らしいのですが、滑舌があまりよくないのです。
声自体は低い響きで良く鳴っているのですが、滑舌のキレがないのでせっかくの響きが、前に出ていかないのですね。
例えば、[r]の発音がどうしても[d]に近くなってしまい、「ラリルレロ」が「ダディドゥデドゥ」となってしまいます。「巻き舌」をしてみてくださいというとやはりできませんでした。
これではせっかく良い声を持っていても、もったいないですね。
ぜひ、滑舌をよくするための「舌筋のトレーニング」をおすすめしました。
(「舌筋のトレーニング」は下記記事を参照)
舌筋を鍛える簡単なトレーニング方法 これで滑舌が良くなり歌にもプレゼンにも効果があります
あともう一つ、「聞こえないので大きな声にしてください」と言われると、意識しすぎるあまり喉に力が入ってしまします。そうなるとついつい「がなって」しまうのですね。喉の力みは本当に良くありません。声に「ガラガラ」とした雑音が出て声の響きが散ってしまいます。
だから、決して「大きな声をだそう」と思ってはいけません。
人が「よく通る大きな声ではっきり聞こえている」と思っているときというのは、響きが楽にのっているときです。しゃべっている本人は、腹式呼吸と横隔膜を使い、鼻のあたりに「ビリビリ」とした響きが乗っているだけ。実はとても楽な状態なのです。
トレーニングをしなくとも、もともと良い声を持っている人というのはいらっしゃいます。
しかし、殆どの人がその声を上手に生かしきっていません。
声の質が良いということはとても素晴らしい素質なのですが、それに頼ってしまい、「声質が良いだけ」で終わってしまいます。本当は、声質だけではなく、良い声を生かすためのトレーニングも必要なのですよね。
市村さんのような方でも、長年の努力を経てあのような声になっています。私たちも自分の声を見直してみることも大事なことですね。