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詩的で宗教的な調べ 葬送

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子供のころ、指揮者でピアニストであるダニエル・バレンボイムのリサイタルを聴いて、とても感動した作品があります。
 
リスト作曲、「詩的で宗教的な調べ」より第7曲「葬送」。
 
最初、ピアノの低音が、まるで鐘の音のようにホールのあちこちに立体的に響き渡り、なぜか分からないのですが、体が震えました。
 
「詩的で宗教的な調べ」は1845~52年頃にかけて作曲された曲集ですが、この中の7番目にあたるのが「葬送」です。その名の通り、重く荘厳な曲。ハンガリーの友人の死への追悼の意がこもった作品のようですが、同じ年に亡くなったショパンへの追悼の念もあると言われています。
 
そのとおり、中間部の曲想はショパンの「英雄ポロネーズ」に似ています。しかし、リストはショパンに敬意を表して、それ以上のテクニックを用いているように思えます。
 
レッスンでこの作品をみていただいたとき、私の先生は
 
「私がジュリアードに留学したときに、ケネディ暗殺がありました。最初は撃たれたらしいという情報が流れ、数十分後にニューヨーク中の教会の鐘が鳴り響きました。それは何丁もの鐘があちらこちらで鳴り響き、重なり合って一つの響きとなっていた。そのとき、皆は知りました。ケネディは亡くなったのだと。」
 
と教えてくださいました。
 
私はこの話をうかがったときに、2011年3月11日大震災のことを思い浮かべました。そしてもう一つ。2000年9月11日丁度アメリカに滞在していたときのことを想い出しました。
 
「葬送」は、あちこちで鳴り響く鐘の音と共に始まり、激情のあと永遠の静寂が訪れ、偉大な魂は天に召されます。

 
本日、初めて演奏会でこの作品を演奏します。
 
私は生かされているという感謝と鎮魂の気持ちをこめて。

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