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歌は伸ばしている音にこそ気を抜かないで

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ピアノと歌との大きな違いは、音を伸ばしているときの音の扱いではないでしょうか。
 
ピアノの場合は、音を出した直後から音は減衰しますので、いかに切れないでレガートに聴こえるかということに気を遣います。
 
また、歌の場合は息さえ続けば音はいくらでも伸ばせますし、強弱をつけるのも自由自在です。だから、伸ばしている間にどのような表現をするかというのが歌の一番大事なところではないでしょうか。
 
ところが、意外に、せっかく歌をやっているのに伸ばしている音にうっかりしてしまっている方が多いのが気になります。
 
2012年8月10日私が運営・指導を行っている合唱団「コール・リバティスト」の練習を行いました。
 
この日はマエストロ(演奏会で指揮をする人)にいらしていただきました。
 
山田耕筰作曲、増田順平編曲の「青蛙」を歌いました。
 
この作品は、旋律の終わりが長い音で終わることが多いですし、長い音をいかに扱うかで作品の雰囲気が変わります。
長い音に細かく強弱記号が書かれていて、音を伸ばしているときに強くしたり弱くしたり豊かなニュアンスをつけていきます。
 
よくあるのが、速いテンポで音がたくさんあるときは、緊張しながら集中して歌うのですが、音が伸びていると安心してしまって、うっかり気持ちの入らない音を出してしまうのですね。
音が伸びている時こそ、歌ならではの表現が可能なのにもったいないと思います。
 
「青蛙」だと、最初の「流そ流そ~」というところですでに、「そ~」と伸ばしながらディミヌエンド(だんだん弱く)がかかっています。
そこを「さあ、弱くしましょう」と言われると、急激に「そぅっ・・・」と息を減らして弱くしたり、人によってはほとんど黙ってしまわれる方がいます。
そのディミヌエンドがセンスよく歌えるのが良い合唱団ですね。
 
方法としては、大きな風船をふくらまそうとして息を送りこんでいる状態のまま、同時に声帯の閉鎖を少しずつ緩くすると音が弱くなります。
ポイントは息を減らしすぎないこと、支えをはずさないこと。音量が思い通りに鳴っているかどうかよく聴くことです。
 
この日は佐藤眞作曲の「蔵王」全曲も歌いました。
その中の第5曲「おはなし」も旋律以外で、男声が2分音符をハミングするところがあり、これはアクセントがついていますが「fp」(フォルテピアノ=強くすぐに弱く)で演奏します。pにしたときに、なくなりすぎないこと。音をのばしながら次の音に向かって音が生きていることが大事です。
 
もう一ヵ所、「トン、トン、トン・・・」と縄をなうときに藁を小槌で叩く音を歌う場面があります。
ここを「トンッ・・」と切ってしまわずに、「トン~、トン~」と余韻を作りながら演奏すると雰囲気がでます。そのときの「ン~」が、舌が上アゴについて口が開いていることと、次の音に繋がるように演奏することがコツです。
 
伸ばす音を作り上げていく演奏は、歌ならではの素晴らしさが際立ちます。ぜひ気をつけてみてくださいね。

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