あなたのここが良くないなんてとても言えない その迷いはマネージャー失格なのか?
私はどちらかというと、はっきりと物を言うことができないタイプです。
人の成長を支援するような立場になったとき、本当は率直に言ったほうがその人のためになると思いながらも、なかなか言うべきことを言う決断ができない。いつも迷ってばかりいる。
これは一見心が優しいと思えるのですが、実は心が弱い。
成長を心から願うならば、伝えるという強さが必要なのではないかと思いました。
自分自身は幸運なことに、師匠や上司にはっきり言ってくださる方がついてくださり、言われた瞬間はしんどいですが、そのときこそ深く考え、悩み、進歩や発見につながっていると実感できます。
しかし、いざ自分が言う立場になってみると、「その方が潰れてしまうのではないか」「やる気をなくして可能性を失ってしまうのではないか」「余計な反発心を持ってしまうのではないか」という思いが先に立ち、結局は言い出せないでいる。言ったとしてもオブラートにつつんでやんわりとしか言えない。
人はたいてい、はっきり「あなたです」「ここをなおしましょう」と言わなければ「自分と関係ない誰か」だと良い方向に解釈しています。それでは伝わらないし、お互いの成長にもつながらない。
「私は結局、人に嫌われたくない、”良い人”でありたいだけなのか」
そう思いました。
ある企業のマネージャーの方に「迷いが多く、はっきり言えない」と相談したところ、すんなりと「迷って良い」とお答えくださいました。
「一見率直に言ってても、相手に対する見えない気配りができるようになるまでには時間がかかる。そして、もしその気配りが、思い通りに言うことを聞かせようと思ってそうしたのならば、それは操作主義に陥り、相手に伝わる。迷いながらも正対することです。」
「迷って良い」しかし「正対する」
私には、逆説を言っているように思えました。
お勧めいただいた田坂広志氏の著書「なぜマネジメントが壁に突き当たるのか」に以下のようなことが書いてありました。
・・・・・(以下引用)・・・・・
「カオスの縁」(Edge of Chaos)という言葉です。
この言葉の意味するものは、生命的な現象とは「完全な秩序」(オーダー)でもなく「完全な混沌」(カオス)でもない、その中間にある全妙なバランスの領域、すなわち「カオスの縁」において生じるということです。
すなわち、複雑系のような「生きたシステム」は、相対立する「矛盾」の狭間の絶妙のバランスの中にこそ出現するのです。
従って、その「生きたシステム」の「矛盾」を解消してしまうと、そのシステムは文字通り「生命力を失ってしまうのです。
(中略)
かつて亀井勝一郎が残した言葉を思い起こすべきでしょう。
「魂の力とは、壮大な矛盾を心に抱き続ける力である」
・・・・・(以上引用)・・・・・
かつて、私を厳しく愛情を持って導いてくださった方々、そして今も率直に言っていただける方々も、迷いと決断の狭間におられたというのか。
世界はなんと矛盾と逆説に満ちているのだろう。
導きをいただいた方々に対する尊敬と深い感謝を抱きながら、自分もいつかあの頂を目指したい。そう思いました。