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ライフワークとしての学びを考えます。

全員で呼吸を合わせるとは

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ヨーロッパの音楽を演奏し、ヨーロッパの発声方法を学んでいても、やはり日本人だということを心底実感するときがあります。
 
2012年7月7日、私が運営する合唱団「コール・リバティスト」の練習がありました。
この日は「東混」(読み:トーコン、東京混声合唱団)のバス歌手、佐々木先生をお招きしました。
 
練習曲は、佐藤眞作曲の混声合唱のための組曲「蔵王」より、1番「蔵王賛歌」、6番「雪むすめ」、8番「樹氷林」、9番「早春」、そして新曲、山田耕筰作曲、増田順平編曲のアカペラ、「砂山」です。
 
山田耕筰作曲、増田順平編曲の日本の歌曲アカペラ集「からたちの花」は素晴らしい曲集です。
次回の定期演奏会では、この作品集の中から6曲を演奏します。
 
「からたちの花」「あわて床屋」「砂山」「烏の番雀の番」「この道」「青蛙」。
いずれも日本の名曲ですが、とにかく増田順平さんの編曲が素晴らしい。情景が目の前に浮かぶような描写力あふれる編曲で、聴いていても歌っていても、日本人の魂が揺さぶられる傑作揃いです。
 
「砂山」は、アクセントのついたハミングで開始します。それが、船頭が船を漕いでいるようで、完全5度の響きが日本海の荒く重々しい雰囲気を伝えてくれます。
 
その響きにのって「海は荒海 向こうは佐渡よ~」と出てくるともう、我々の心の底に眠っているプリミティブな「大和魂」が目覚めてくるような気がしてきます。
ヨーロッパの音楽をやって、ヨーロッパの発声法を勉強していても、やはり「ああ、やっぱり日本人だな」と自覚する瞬間です。
 
演奏のポイントは、船を漕ぐ様子を描写するハミングです。
 
音にアクセントがついていて「hm.」という表示がありますが、最初の[h]で、腹式呼吸を使って息を強く押し出すように吐きながら[m]ハミングに持っていきます。
[h]でグイと船を力強く漕ぐ様子を表現できるようにしてください。
[m]に入ってからは、音量をキープします。次のアクセントに向かって、クレッシェンド(だんだん強く)したくなってしまいますが、それは我慢して、出来る限り同じ音量で次の音に向かってください。
 
あと、[h]のときに音程はつきませんが、[m]の音程と同じ高さから出発してください。音程がぶれると重く引き締まった雰囲気が出てきません。
 
この日は、まだ練習しませんでしたが、難しいのは歌詞の3番からの動きを出すところです。
このようなケース、いつもならピアノの伴奏について歌っていました。しかしアカペラの場合、全員がそのとき空気で、「あ・うん」の呼吸を合わせながら、一つの生命体のように音楽をしていかなくてはなりません。
これは、人間的に仲が良いとか悪いとかは全く関係なく、純粋に音楽主体の方向性を合わせるという意味です。
 
どうすればいいのか。
 
お一人お一人が、頭を使ってイマジネーションを深め、音楽と向かい合って楽譜から音楽の真意を読み取ることです。音符という記号から祈りの気持ちを感じ取ることです。
 
「全員で呼吸を合わせる」ということと逆説を言っているように思えますが、これもまた真実なのです。
 
素晴らしい作品をいただけました。
2013年5月19日、浜離宮の良質な残響の中、目の前に日本海の情景が見えるような演奏をしたいですね。
 

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