良い声を出そうとすると歌詞がしゃべりにくくなるのはなぜか?
コンサートでプログラムの後半になると、声が上がってきて深みがなくなってくるということが良くあります。
疲労してきて、マラソン選手でいうと、いわゆる「アゴが上がっている状態」とでもいうのでしょうか。
先日の合唱団の稽古でも、秋島先生が「佐藤眞さんの「蔵王」を全曲歌うのは大変です。改訂版の前は、最後の10曲目に第1曲目の「蔵王賛歌」がもう一度あった。歌うのがあまりに大変なのでなくなったのかもしれません。もう一度歌おうとすると疲労しているので『喉頭が上がってきてしまって下げようと思っても下がらない。』そうなると、高音で声が浅くなってしまうのです」とお話ししていました。
喉頭とは「喉仏」のことです。
発声において「喉頭が上がってきてしまうのはよくない」ということですね。
本来は、良い声を出すために、喉頭はなるべく下がった状態が良いとされています。
それでは、喉頭が下がった状態とはどんな状態を言うのでしょう。
それは「あくび」をしているときです。
あくびをしているとき、喉頭は下がっています。
このような状態で声を出すと、深みのある良い声が出るのです。
あともう一つ、つばを飲み込んだときも喉頭は下がっています。
練習しすぎたかな?とか、ステージで疲労してきたかな?と思ったら、早めに水やお茶を飲むこと。
だから、講演などで水が出ているのは、単純に喉を潤すためだけではなく、理にかなったことなのですね。
もし、よく人前で話したり歌を歌う方は、普段から喉頭を下げるボイストレーニングをしてみることもおすすめします。
「リップロール」という簡単な方法があります。
唇を閉じて、息を流すと「プルプルプル・・・」と唇が振動しますね?
これがやりにくい方は、普段から頬や口角が下がってしまっている傾向にあります。頬や口角、鼻の横などを手で軽く押し上げながらトライしてみてください。
リップロールをしているときというは、自然に喉頭は下がっています。
一定の息の速度で行うと、横隔膜の周辺が鍛えられて腹式呼吸をマスターできるようにもなりますし、声帯のマッサージにもなりますから、人前で声を出す前に行うと出る声が全然違います。
リップロールは、いろんな意味でもお勧めのボイストレーニングメニューなんですよ。
今日は、喉頭を下げるという一点においてお伝えしました。
しかし、喉頭を下げて歌うときのイメージであくびをしながら歌ってみまると、一つ難しいことに気がつきます。
歌詞がしゃべりにくいのです。
歌詞をよくしゃべろうとすると、舌をよく使います。舌は喉頭とつながっていますので、舌が上がってくれば、喉頭も連動して上がってきてしまう。口の中も狭くなってしまう。
ここが悩ましいところです。
「ものすごく良い声なんだけど何をしゃべっているか分からない」というオペラ歌手を見かけることがありますが、理由はそういうことなんですね。
良い音を追求しながらも、歌詞に対しての工夫が必要となってきます。
だから歌手の方々は、「より良い声のまま歌詞が分かる」というギリギリのところを見つけてバランスをとる練習を日々行っています。
歌詞や響きとのバランスのとり方については、今後またご説明していければと思っています。
でも、まずは「良い声」ありきですよね。
ぜひ頑張ってみてください!