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誉めて伸ばす時代の「誉め力」 ただ誉めるだけなら誉めないほうが良い

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「誉めて伸ばす時代」と言われています。
 
マラソンの高橋尚子選手を育てた小出監督。テレビで流れる練習風景で必ず言っているセリフ、「いいよ~すごくいいよ~絶対一位になれるよ~」というのがありました。
 
小出監督は、ただ誉めているだけではない。「もうすでにめいいっぱい頑張っている選手たちだから、厳しく叱る必要はない。後は誉めるだけでよい」という考えなのです。
 
だから、一般的には、優しく誉めてさぼる人もいます。
 
いつかピアニストの中村紘子さんが「本来、やる気をもっている方は何も言わなくても勉強します。誉めてさぼるようならそれまでの人」と言っていました。
 
「誉める」という一点においても実は誉められるほうにも下地がないといけないということです。
 
最近「誉めて伸ばす方法」などの本を書店でよく見かけます。
私は、ただ褒めれば良いというわけではない、しかし操作しようとして誉めるのではない、誉めるのはハウツーではない、と思います。
 
「最近は厳しくいうと嫌われるし、やる気をなくすから」などの思いで誉めているとしたらば、それは相手に必ず伝わります。
 
私自身、誉められるのは好きです。
でも、もし相手が「この人は誉めてればやってくれるから」という思いで誉めていたとしたら、厳しく言ってくださったほうがどんなに良いかと思います。
 
ご自身も経営者であり、社外取締役も歴任なさっている方の講演で伺った話です。
ある企業の経営者が、社員全員が全国から集まる全体ミーティングで、各地域のグループを一つ一つ、丁寧に、腹の底から熱い思いを込めて誉めていたのだそうです。
 
「良くなった!」「頑張った!」「素晴らしい成長をしている!」
 
よく聞いていると、シンプルな言葉で当たり前のことを言っているだけなのに、その場の空気が熱く盛り上がって、社員全員心が一つになっていくのが手に取るように感じられた瞬間だったそうです。
 
そして、その経営者は後日、
 
「誉めるのも命懸けですわ」
 
関西弁で力強くそうおっしゃったそうです。
 
リーダーが、もし自分の心に劣等感を抱いていたり、操作してやろうと思っていたら、その言葉はそこまで人の心に届かない。ここまで言葉に魂が宿るわけがない。
 
リーダーはどんな小さなグループにおいても、その方々の人生、命の時間をお預かりする仕事。
そして、自分の人生おける尊い時間も賭している。だからこそ、共に成長することを願う。
 
その覚悟があるからこそ、本気で、命懸けで誉められるのでしょう。
 
「命懸けで誉められるか」
 
自分に問うていきたいです。

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