思っている音と実際出している音は違う
歌っているとき、話しているとき、自分の声が他人に対してどのように届いているか?
気にしたことがあるでしょうか。
意外に思うかもしれませんが、実際は自分で聴こえているようには届いていないのですよね。
2012年5月26日、私が代表・指導を行っている合唱団「コール・リバティスト」の稽古に東混(とうこん=東京混声合唱団)テノールの秋島先生をお招きしての稽古を行いました。
秋島先生は、5月13日に行われた定期演奏会にお越しいただきました。
まずこの日は最初に演奏へのコメントを頂戴しました。
「皆さんへの課題として、コンサートの最初にくるアカペラ(楽器の伴奏なしで人の声だけで歌う)。これをもう少し克服する必要があります。どこが良くないか。『音程』です。」
「ピアノ伴奏がつけば上手に歌える。というのは、ピアノが音程を助けてくれるからです。助けなしでも歌えるようになること。これが大事なことでしす。」
「それでは、音程がなぜ不安定になってしまうのか?それは、自分で思っている音と実際に出す音が違ってしまっているからです。イメージではこういう音を出そうと思っていても、色々な事情によってその通り出ない。そうなると音程は不安定になります。だからこそ発声の練習を行っているわけです。」
私自身も、たまに、ある音程にはまってしまうことがあります。そうなると少し音がずれていても気がつかない。レッスンに行ったとき、先生に「音が下がっている」と注意を受けて、初めて気がつくのです。
そういうとき、「一人で自己満足でやっていたら怖いなあ」とよく思います。
ある声楽家の方が、「自分の声を嫌いになるには、録音して聴くことが一番です」とおっしゃっていたことがあり、まさに、思っている音と実際出している音は違ってしまっているのです。
もちろん、発声の稽古をして声磨きは続けなくてはならないのですが、「絶対に自分は正しい」ということはないと、常に指導者の意見を受け入れる謙虚な気持ちを持ちたいですね。
この日は、定期演奏会後の初稽古。
新しい作品、佐藤眞の「蔵王」が始まりました。
「蔵王」はみちのくの叙情的な風景を描いた、雄大な作品。
2011年は高田三郎の「水のいのち」、2012年は中田喜直の「海の構図」。
意図しているわけではないのですが、来年2013年は「蔵王」。
私たちがこうして音楽を演奏し、生きる喜びと成長を得ていることに感謝しながら練習していきたいと思います。