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尾崎豊 その創作の秘密が解き明かされるノートとは

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シンガーソングライターの尾崎豊さん(1965~1992)が、生前に60冊以上もの創作ノートを残していたことが分かりました。
それは、10代のデビュー前から書き溜めていたものから、26歳で亡くなる直前まで、10年間に渡って、感受性の赴くままに表現した詩や、その時々の思いなどが書かれています。
 
今まで尾崎さんのことは良く知らなかったのですが、その生き方からうかがえるガラスのような繊細さと、燃えるような情熱、一度ノッてくると何かが降りてきたような空前絶後のライブ映像を見て、最近興味を持ち始めていたところです。
 
ノートには、実際発表された作品の歌詞以外にも、いや、それ以上に、たくさんの言葉が綴られていました。
 
一つの言葉が降りてくる。そのエッセンスから、次の言葉をたぐりよせる。
ノートからは、濃密な創作過程と、音楽以上に尾崎豊の体臭を感じることができます。
 
演奏だけを見ていると、一見天才タイプに見える尾崎さんですが、実は努力家で、もがき苦しみながら音楽のイマジネーションをかきたてていたのです。自分の本当の表現になかなか至らないある種のもどかしさと絶望。「人はしょせん一人なのだよ」という心の言葉が聞こえてきて、孤独な寂寥感をひしひしと感じることができます。
 
天才といえば、モーツァルト。
 
モーツァルトは、作曲をするとき、ほとんど下書きをしなかったと言われています。手書きの楽譜は、消した跡もなくサラサラと書かれていて、頭の中で完成した音楽をそのまま楽譜にした様子がよく分かります。
 
逆に、ベートーヴェンは、たくさんの下書きや、書き直し、アイデア帳が残されていて、格闘しながら作曲していた様子がうかがい知れます。
まず、何かの小さなモティーフを思いつくと、そこから、ああでもない、こうでもない、とイマジネーションをふくらませながら作品を構築していったのです。
そしてベートーヴェンは、メモを持ってよく散歩をしていました(筆談帳でもある)。歩きながら作品のアイデアを常に考えていたそうです。
面白いもので、良いアイデアというものは、思いついて「家に帰ってから書こう」と思っても、その場でつかまえないと瞬時に去ってしまうもなのです。ベートーヴェンはそれをよく分かっていたのですね。
 
尾崎さんは、常に湧き上がるインスピレーションをノートに書き記していました。こう見ると、ベートーヴェンの創作スタイルに近かったかもしれません。
社会に対して、やり場のない憤りを感じてたところも似ていると思えます。
 
死の直前、アメリカから帰国した後のノートには、「自分は何を表現したいのか」見つめ直す姿も見られ、創作という心の葛藤が手に取るように伝わってきます。
 
尾崎さんのノートは、元マネージャーさんを務められた方によって出版されるそうです。
 
私も、創作ノートを持っています。
もし自分の死後、世に出せないような創作ノートが公表されたらとしたら、かなり恥ずかしいかもしれません。
 
しかし、尾崎さんの創作の秘密が解き明かされるこのノートは貴重なものですね。
尾崎さんには申し訳ないのですが、ぜひじっくり読ませてただければと思っています。

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