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円空 その微笑と生きる悲しみ

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円空(1632~1695)の仏像を見たことがあります。
 
それは「円空仏」とも言われ、どれも穏やかに微笑んでおり、見ているだけで暖かい気持ちになれる仏像たちです。
 
生涯で12万体の仏像を作り、全国各地にその姿を見ることができます。
 
円空は修行のために全国行脚をし、地域ごとで人々の苦しみ、病、災害、干ばつなどから救うために、仏像を彫り続けました。
 
私は、その慈愛に満ちた微笑から、円空の深い悲しみが感じられます。
 
人々に生きる勇気や喜びを与えるような作品とは、深い悲しみや寂しさを知るものでなくては作ることは出来ないと思っています。
 
冬の厳しい北海道や東北を歩き続けた円空。
その心に何が去来していたのでしょうか。
 
長良川の洪水で母を失ったのを機に、山岳修行、そして全国行脚に出た円空。
その解決できようもない、答えの無い問いを問い続け、深い思いを背負って人生を歩み続けたのでしょうか。
 
モーツァルトの作品は、明るい音楽が多く、聴いていて楽しい気持ちになりますね。
 
しかし私は、その明るい音楽の中に時折顔を出す暗い音楽に、モーツァルトの本質を見ます。
なんという悪魔のような、奈落の底を覗き込むような響き。なんという心をしめつけられるような寂寥感。
だからこそ、彼は天才なのだと思います。
 
そこに気がついたとき、明るい音楽なのに笑顔に涙をいっぱいためながら疾走するモーツァルトの姿が見えるのです。
 
円空の微笑み。
それはもしかしたら「生きる悲しみ」ではないかと思えるのです。

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