アメリカの教科書にも載った日本人 天才がたどりついた人間愛とは
「タングルウッドの奇跡」として、アメリカの小学校の教科書に掲載された日本人がいます。
ヴァイオリニストの五嶋みどりさん(1971~)です。
みどりさんは14歳のとき、タングルウッド音楽祭でボストン交響楽団と共演。レナード・バーンスタインの指揮で「セレナード」を演奏中にヴァイオリンのE線が2度も切れてしまうのです。みどりさんは当時3/4サイズ(子供用サイズ)のヴァイオリンを弾いていたのですが、一度目は即座にコンサートマスターの4/4サイズ(大人用サイズ)に持ち替えて演奏を続けます。しかしさらにもう一度E線が切れてしまうのです。今度は副コンサートマスターのヴァイオリンを借りて最後まで演奏を成し遂げました。
子供用サイズから、いきなり大人用サイズのヴァイオリンを持たされても、普通は弾きこなせるものではありません。みどりさんの、成熟した大人さえも凌ぐ冷静沈着さと天才的な技術に圧倒されてしまいます。
そんな伝説的なヴァイオリニストも、20年前より財団をつくり子どもたちに音楽を届ける活動を始め、今は日本人初の国連平和大使です。
2012年2月1日日本経済新聞にみどりさんの記事が掲載されていましたのでご紹介します。
・・・・・(以下引用)・・・・・
「音楽に何ができるのか」という問題意識をもって活動に参加した音楽家は、途上国に行き、ゴミの山の隣で灼熱のなか冷房もない劣悪な環境に置かれた時、自分たちにできるのは音楽しかないと自覚する。演奏を始めると、ゴミの臭いも暑さも気にならなくなり、自分が音楽に救われていることに気付く。その結果、音楽に対する考え方や社会との関わり方が変わっていく。ホール以外の場所に積極的に出て行けば、色々な気持ちを経験できるのです。
音楽を通じて社会に貢献できる喜びを知って20年たった。やり始めたら、やめられません。音楽の可能性を突き詰めたいという思いがますます強くなっています。
・・・・・(以上引用)・・・・・
財団を立ち上げたときは20代。
その当時のアメリカでは音楽の授業が削られ始めていて、何か行動をおこさなくてはと思ったそうです。
「まだ早い」「今はもっと音楽に集中する時期ではないか」と周囲に反対されたみどりさんでしたが貫き通しました。
私は、みどりさんはバーンスタインの自由で大きな人間愛に影響を受けておられると思います。バーンスタインの亡くなった後も、その意志は受け継がれているのだとはっきり感じます。
今年はデビュー30周年ツアーが日本で予定されています。
みどりさんが若い頃、教会で演奏を積んだ経験から、感謝と復興・平和への願いををこめて、会場は教会や寺社、仏閣を選んだそうです。
世界の名だたるコンサート・ホールで演奏してきたみどりさんが、オール・バッハでヴァイオリン一丁。
さらに深まった音楽を聴かせてくれると思います。