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「ふりむくなっ」 ことばの扱い

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昨日の記事では、作曲家、中田喜直の作品、女声のための組曲「魚とオレンジ」について書きました。
 
合唱組曲「都会」も、現在演奏されることはまれですが、作曲家であり音楽家である中田喜直の真の姿を感じさせる名作だと思います。
 
2011年10月1日合唱団コール・リバティストにマエストロの稽古を行いました。
(マエストロとは、本番を指揮する人のことを言います)
 
この日は、「都会」の第二曲「ふりむくな」と第四曲「子守唄」を練習しました。
 
第二曲の「ふりむくな」は、ことばの扱いが面白いですね。45年前の作品とは思えないような斬新さがあります。
 
男声が「ふりむくな!」と、ドスの効いた声で、セリフのように歌うフレーズが、何度も繰り返されます。
それに対して、女声の透明感のある旋律。そのコントラストの激しさ。
さらに休符を多用することで音のない瞬間を作り出し、聴き手に強い緊張感を感じさせる凝縮感のある見事な作品。
それも、ただのこけおどしではなく、作曲家の魂の叫びが聴こえてくるところが、中田喜直の芸術家としての格なのだと感じました。
 
中田喜直の他の芸術作品においても、独創的にことばと音を組み合わせるという手法をとっています。この作品を演奏するコツも、セリフのような「ふりむくな!」をいかに効果的に歌うかというところにあります。
 
演奏のポイントは、「ふ・り・む・く・な」というように、一つ一つの音を極めてはっきり発音することです。速さもありますので「ふりムニャムニャ・・・」というように何を言っているのか聴こえないという結果になりがちなのです。
 
もちろん音も大事なのですが、演奏家にとっては、「ことば」をどのように扱うかが分かれ道。日本人だからこそ、その真価を発揮できる曲だと思います。
 
「子守唄」は音同士の繊細な重なりが特徴です。
特に半音の幅(例えばドとレ♭の幅)でぶつかりながらロングトーンを行うところもあり、音が少ない割には難しい曲だと思います。
これが成功すると、この世のものとは思われない世界に連れ去られそうになる作品です。
 
コール・リバティストでは、来年5月に浜離宮朝日ホールで「都会」を演奏する予定です。
ぜひ皆さんに聴いていただきたいと思っています。

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