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ライフワークとしての学びを考えます。

素晴らしい演奏をするための極意とは しばらく忘れて放っておくこと

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「この曲はしばらく3~4ヶ月弾かないでおくといいよ。」
 
リサイタルに弾く曲をこれから追い込もうと思っていたところ、そう師匠に言われたことがあります。私はそれまで、練習すればするほど良くなると思っていたので意外でした。
 
「音楽もワインと一緒で、長期間寝かせておくと熟成してくるということがある。」
 
「漬けておく曲と、練習する曲を分けると良い。長く置くともう一度弾くとき良い味が出てくるね」
 
「”あ、これは今は放っておいたほうがいい”そう感じるときが必ずあるから、そうなったらいったんやめて他の曲をやるか、他の事をやったらいいよ。それで、たまに味見をする。そうすると”飲み頃”が分かるようになってくるから。それが分かると面白くなってくるね。」
 
作品によっては「発酵臭」さえするほうがいいのもあります。ロシアの作曲家スクリャービン(1872~1915)なんかはそうです。
 
なぜなのか?
 
最初、この考えはあまりピンと来ませんでした。
 
この本に出会うまでは。
 
ジェームス・W・ヤング著「アイデアのつくり方」。
 
アイデアを作るまでに「アイデアを出し切ったら、あとはしばらく放っておきなさい」という段階があります。
それは、完全に忘れているようでそうではなく、人間は無意識の中でアイデアを整理することができるのです。
あるとき「ひらめいた!」となるのは、考えて考えて頭の中で整理ができてきたのが、外に出てくるだけなのですね。何もないところから天才的なアイデアは出てこないということのようです。
 
音楽の場合、それが長期にわたって行われる。
特に複雑な作品ほどその時間が必要なようです。
 
久しぶりに取り上げると以前理解できなかったところが消化できているのです。余分な力が抜けて、さらに感覚も研ぎ澄まされていると感じることがあります。
 
一生懸命真面目に練習し続けることだけが勉強ではありません。
たまには放り出してみるのも良いと思います。ぜひ思い切ってやってみてください。

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