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ライフワークとしての学びを考えます。

しびれる音を探せ

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大人になってから美味しいものってありますよね。
子どもにはわからない味。
 
例えば、ビールの苦味。
 
子どもの頃は、父親がなぜあんなに美味そうに飲んでいるのか、さっぱり分かりませんでした。
 
音楽で感動的なところにおいて、作曲家はこのビールの苦味のような音を使っています。
この音は一見、あまり綺麗ではない。
単独で聴くと汚く聴こえないこともない。
そんな音。
 
これを私は「しびれる音」と言っています。
 
演奏するとき、この「しびれる音」を探し出し、いかにそこを表現するかに命をかけます。感動の質が決まってくる大きなポイントだからです。
 
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」。
 
この作品の第一楽章は特に有名ですが、ベートーヴェンはその時代としては大変に前衛的な音、まさにしびれる音を大事なポイントで使っています。
 
今日は、ホロヴィッツの演奏で聴いていただくことにしましょうか。
 
演奏の1:24のところ「シ→ド」の「ド」、4:50のところ「ド♯→レ」の「レ」。2回ずつ繰り返し心をしびれさせるように訴えてきます。テンションの高いハーモニーを使っていますので味わってみてください。
 
ホロヴィッツの演奏も素晴らしく、特に弱音の哀しさは病的とまで思えます。天才の技が怪しく光り輝く名演です。

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