楽器によって性格の違いがあるの?
私はもともとピアノが本職です。
でも今は、ピアノと同時に声楽もやっています。
音高・音大時代も声楽はやっていたのですが、卒業してから何年もほとんど歌っていなかったのでサビついてしまい使い物になりません。仕事をするためには、一からやり直す必要がありました。
あらためてやってみて、自分が変わってきたことに気がつきました。
ピアニストは、オーケストラの音を一台で演奏してしまえるくらい音数が多いので、構築していく感覚が強い。
音の長さや拍子もきっちりしないと気がすまないところがあります。
音がたくさんあると(楽譜が真っ黒だと)本能的にアドレナリンが出ています。
逆に歌い手は(師匠いわく)「適当」。
身体が楽器なので、全てにきっちりきっちりしていると身が持ちません。
「どこで手を抜こうか常に考えている」のです。
オペラのアリアでも、全ての音に全力投球することはありません。
「ここぞ」というところに120%の命をかけるのです。
歌の場合、いいかげんさはとても大事なことで、作品を演奏するときに額面通りやらないほうが良い場合がとても多いのです。
他の器楽に比べて、伴奏者に「ちょっとここのところゆっくり歌いたいから待ってて」ということが多いのも声楽家です。声楽は、伴奏で息のタイミングを合わせるのが一番難しいですね。伴奏者もかなり声楽的なことがわかっていないと、伴奏がつけられません。
楽器の中で一番生真面目なピアノと、一番自由な歌。
この両方をすることで、自分の中でよいバランスがとれてきたように思えます。
ピアノも歌のようにラインで音楽をとらえる感覚が必要ですね。声楽的なことがピアノにも良い影響を与えています。
この頃感じるのは、神経質だった性格がかなり開放的になってきたように思えます。
自分にとって気持ちが楽になって良い傾向にあります。
ピアノだけもいいのですが、歌をやってみると世界が広がりますね。