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わずか9ヶ月でやる気のない組織を一流にしたリーダー その方法とは?

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昨日の記事でも書きました合唱指導者のギャレス・マローン先生は、BS世界のドキュメンタリー「クワイア・ボーイズ」の舞台であるランカスター校で、合唱に全く興味がないどころか「合唱なんてかっこ悪い」「合唱なんて女の子みたいでやだ」と言って、歌うことさえ拒絶していた生徒たちのやる気を引き出し、人生観まで変えてしまい、最後はロイヤルアルバートホールにおいて5000人の前で素晴らしい演奏をするまでにしました。
 
一体ギャレス先生はどうしたのでしょうか?
 
まず、ギャレス先生は、生徒たちの間で 一番影響力のある人を入れる ことにします。
ランカスター校は男子校で、ラグビーやクロケットなどスポーツが盛んな学校です。生徒の間ではスポーツ部顧問の先生が尊敬を集めていました。
「音痴だから」と言い訳をしてなかなか参加しようとしなかったスポーツ部の先生を「いい声をしていますね。」と説得。生徒たちも「あの先生が歌うなら」と集まってきます。
 
もう一人は、ラッパー部のリーダー、イムラン君。不良グループのボスでもあります。
イムラン君は、私が聴いても歌の才能が飛びぬけていました。彼が歌うと周囲の人が注目せずにはいられないオーラを持っています。
しかしイムラン君はギャレス先生の呼びかけを無視しつづけます。それでもギャレス先生はあきらめません。ことあるごとにイムラン君を追いかけ口説き続けるのです。もともと歌は好きなイムラン君。最後はギャレス先生の情熱に根負けし、晴れ舞台で見事な歌を聞かせてくれました。
 
リーダーは結果を出すために、必要な人材だと思ったら土下座しても来てもらうそれが責任を持った人間のとる行動だと思います。プライドや意地なんてないのです。
 
経験のない合唱団ですから、合唱になれていない生徒も多くいます。
ギャレス先生は、ポピュラーミュージックのような、みんながよく知っている曲から練習しはじめました。そうすると、抵抗なく歌に入っていくことができます。
さらに、さすがだと思ったところがあります。
合唱に少しなれてきた頃に、クラッシックの王道をいく名曲、ヘンデル作曲の「オンブラ・マイ・フ」を歌わせたことです。
 
ちょっと背伸びした課題を与える。そうすることで自然に音楽的な基礎力のレベルアップが出来ていました。
 
練習でギャレス先生は褒めて乗せるのが上手。ただし「感情表現ができていない!」など、言うべきところは厳しく指摘します。
褒めて乗せたあとに厳しいことを言う。このパターンは言われる方も入っていきやすいのです。
 
たくさんいる生徒一人一人を実によく見ています。
ある生徒が小児ガンであることを相談してきたときの表情・・・。頭を抱え込んで、自分の家族がそうなったかのように苦しんでいました。
感情で流されてはいけませんが、強い共感力がリーダーには必要です。それによって人はついてくるのです。
 
そして、ロイヤル・アルバート・ホールのような 発表の場を作りモチベーションを上げる ことをします。
人前で演奏することは緊張しますが、目標ができることで練習に熱が入ります。たくさんの人に認めてもらいたいという気持ちもよい方向に働くのです。
 
実はロイヤルアルバートホールでの演奏は、出来てすぐの合唱団では出演が不可能でした。
それを、自ら主催者側にアピールしに行きます。すんなりOKとはいきませんでしたが、行動力と熱心な説得力で出演権を勝ち取ります。
 
最終目標であるロイヤル・アルバート・ホールで演奏を成功させるために、サマーフェスティバルで本番の舞台経験を積ませることも忘れません。目標達成のための用意は周到に行います。
 
大きな目標を掲げ、それに合わせてステップアップしていく戦略が見事でした。
 
ギャレス先生は、合唱の素晴らしさを伝えるだけでなく、子供たちが音楽によって何かを達成する喜びと、「自分たちでもやれば出来るんだ」というプライドを植えつけたと思います。
 
目標達成のために何を優先すべきか。
そのためには具体的に何をすべきか。
そして一人のリーダーが心に情熱の嵐を持っているか。
 
組織が変革できるかどうかは、ここにかかっていると思います。

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