フランス料理・恵比寿「マッシュルーム」山岡昌治シェフに聞く【第四回】フランス料理はもっと気軽に楽しめる どんどん質問しよう
恵比寿「マッシュルーム」フレンチレストラン、山岡昌治シェフへのインタビュー第四回です。
フランス料理というと、堅苦しくて緊張してしまう、と思っている方も多いかと思います。しかし山岡シェフは「もっと気楽に楽しんで、上手に利用してほしい」と言います。
この店の名前「マッシュルーム」も、この名前で緊張する人なんていないだろうと思ってつけたとか。
本当は、フランス語でかっこいい名前にしたかったそうです。若い頃フレンチのシェフに憧れたその気持ちを名前に託したかった。
最初、マッシュルームのフランス語、「シャンピニオン」を考えたのですが、同渋谷区に「シャンピニオン」という店があって、ご近所なのにこれはいくらなんでもまずい、と思い諦めたそうです。
結局、現在の店名に落ち着いたのですが、きっとキノコ神様に見初められて導かれたのでしょうね。
この頃はずいぶん分かりやすくはなったのですが、メニューに何が書いてあるのか分からないと、それだけで気後れしてしまいますね。
そんなときは「どんどん聞いていいし、聞いてほしい。聞くことは少しも恥ずかしいことじゃない」とおっしゃいます。ちゃんとした料理人だったら、「もっと教えてあげよう」と思うはずです。
「ボクの女房(料理研究家の大森由紀子氏)なんか何でも聞いちゃう。ある有名な3ツ星の寿司屋に行ったときなんか、みんなシーンとして食べてるところで、ネタ見て”コレなんですかー?”って。本マグロがメインなんだけど”大間のマグロです”と説明を受けて”大間ってどこー?”。大将もオオ~?って引いてたけど、そういう性格だったら、どこ行っても面白い。聞くと恥をかくと思ってるかもしれないけど、知ったかぶりしてるほうがつまらないよ。」
私も、分からないことはどんどん聞いて、サービスの方との会話を楽しんでしまいます。それも食事の楽しみの一つだと思うから。
基本的にサービスの方は、身なりはきちんとしてても、こちらに楽しんでもらいたい、という気持ちを持っています。お客さんが最初は緊張してても、帰るときはリラックスさせて「あ~、楽しかった」と思わせるのが良いサービスなんですよね。
「贅沢をするってことじゃない。楽しむ気持ちを持つことで、人間の心が大きくなるような気がする。そして心に余裕ができると他人を理解して、許せるようになると思う。心の余裕は、きっと平和につながると信じている。」
そんな山岡シェフですが、シェフの夢ってなんですか?
「年をとっても元気で料理を作って、美味しいものを美味しく食べられる人間でいたい。そして、自分の足で山を歩いてキノコ採りをしていたい。この店を好きだって言ってくれる人がいる以上出来るだけ長く続けたいね。そういう人たちをがっかりさせないような高いレベルを持ちながら。」
「人に感動してもらったり、幸せだったと言ってもらえるような自分でありたい。レストランって明日への活力を生み出すところ。そのためにあると思っている。」
私は、ここに来るといつも幸せな気持ちでお店の階段を降りるのです。そして周りの人にもう少し優しくしてあげたくなります。
皆さんも、「ここに来れば幸せになれる場所」、探してみてくださいね。
山岡シェフ、長い時間素晴らしいお話を有り難うございました。
さて、明日は最終回。「マッシュルーム」のディナーコースをご紹介したいと思います。楽しくて、不思議で、そして官能的な世界。お楽しみに。