愛の力で舞台に立った天才
ピアニストのマルタ・アルゲリッチ(1941年~)が第13回別府アルゲリッチ音楽祭(5月8日~19日)のため来日しました。
キャンセル魔でもある彼女が、無事来日して演奏してくれること自体ラッキーなことなのです。
しかし今回はアルゲリッチの強い想いがあっての来日。東日本大震災のことを知り、ピアニスト、スティーヴン・コヴァセヴィチとの間に生まれた末娘ステファニーの「遠くの国だけど、すごく身近な出来事に思える」の一言で音楽祭の決行に踏み切りました。
アルゲリッチって、本当に感性の人だと思いました。
納得できない場合は絶対に弾かない。
けれど、どうしても弾きたいときはどんなことがあっても弾く。
以前は、「突発的に娘の出産に立ち会いたくなったから」などの理由で音楽会をキャンセルしたこともあるアルゲリッチですが、今回は違いました。
音楽祭ではなんと、地元の津久見樫の実少年少女合唱団が歌うスペイン語の歌の伴奏を引き受けたのです。
あの天才女流ピアニスト、アルゲリッチの伴奏で歌う合唱。なんて幸せなことだろうと思います。
アルゲリッチは「子どもたちの歌声に心震え、涙があふれた」と言います。
またアルゼンチンの音楽では「全員を鼓舞しようと興奮のあまり、野生的に弾きすぎて爪が割れた」そうです。
さすが、元祖野生派。
御年70歳になっても、そのパワーは衰えることを知りません。
「私は大震災後、日本人が示した忍耐、気配り、愛のすべてに感謝しただけ。できることは何でもします。」
秋に発売される音楽祭のCDの印税は全額義援金にあてるそうです。
常に、演奏に対して孤独と葛藤を滲ませて舞台に立ち続けるアルゲリッチは、素晴らしい才能を持ちながら、今やソロ(独奏)をすることはほとんどなくなっていまいました。
そんな彼女が、愛の力で舞台に立ってくれた。
落ち着いたら東北地方の被災地を演奏して回りたいと次の構想を描いているそうです。
これからも元気に演奏して、皆に勇気と希望を与えてもらいたいですね。
(本日の記事は6月6日日経新聞夕刊を参照させていただきました。)