音楽の役目はいずれやってくる
昨日、演奏会のために都内のクラッシック専用ホールにピアノの選定と打ち合わせに行ってきました。
ホールに到着してまず目に入ったのは、広告欄にある公演中止のお知らせ。
特に目立つのは外国の演奏家です。海外で日本のことがどのように取り扱われているのかを、まさに目の当たりにする思いを味わいました。
ホール内は、いつもは客電をつけているのですが、この日は真っ暗。
舞台上も、スポット数本だけで薄暗く、2台のスタインウェイ・フルコンサートグランドが静かに闇の中に浮かび上がっています。
節電を行っている様子。
ここのピアノは、すでに数回弾いたことがあるのですが、最後が約1年前だったため音が変化している可能性もあり、一応選定が必要でした。
最初にパラパラと弾いてみて驚きました。
透明感がなく音が眠っています。
これは相当な期間弾いていないな、ということがすぐに分かりました。
通常は毎日のように弾かれていて、管理もパーフェクトなはず。
このホールが、ピアノをこんな状態にしておくなんて考えられません。
楽器は、弾いてこそ、その性能を保つことができます。
使っていないと、せっかくの名器でも能力や価値が落ちてしまうものなのです。
ホールマネージャーさんの話しだと、やはりピアノは3月いっぱい使用していなかったそうです。
さらに、3月11日以降は、ほとんどの演奏会はキャンセル続き。
今後のホール自主公演も行うことができない、と苦しそうに言っていました。
他のスタッフも心なしかしょんぼりしています。
経済の低迷で公演数が減っているところに、この震災なのです。
本番の演奏会でも、舞台上の照明は通常の明るさは使わず、必要最低限の照明で行います。そうすることで、お客様にも少し納得していただけるのだそうです。
でも、暗めのほうが、かえってヨーロッパのホールみたいで雰囲気が出るかもしれないと思いました。
同行したマネージャーさんと帰りに話していたのですが、「7月頃まで、もうすでに仕事のキャンセルが多い」とのこと。「私たちにとって苦難の時期になってしまいました」
このままだと、日本の経済ばかりでなく、芸術文化さえもが落ち込んでしまう危機感を感じました。
良い演奏会をしたり、聴いたりした後、皆が元気になって、また社会貢献しようというエネルギーが出てくるのではないでしょうか。
皆が幸せになったとき、周りも幸せな気持ちになります。
しかし、今は、クラッシック音楽関係者にとって、力を蓄えるときかもしれません。本当に必要とされるときまで時間はかかるかもしれませんが、今回の震災をきっかけに、今までとは違った価値観が生まれ、新しい世界が開けるのではないか、と希望を持っています。
音楽の役目とは?そして、自分の役目とは?深くみつめたいと思っています。