だれもが持っている眠っている才能を引き出すための最後のわざ
「上手になるためにはどうすればよいでしょうか?」
と聞かれたら、
「衣装を着ることです」
と答えます。
レオンカヴァッロ作曲の歌劇「道化師」で、道化師のカニオが怒りと悲しみに震えながら「道化師とはどんなときでも人を笑わせるのが仕事」と、衣装に着替えるアリア(歌)『衣装をつけろ』があります。
アカデミー賞映画の「アンタッチャブル」で、ロバート・デ・ニーロ演じるアル・カポネが、オペラハウスのバルコニー席で泣きながら観ていたアリアがそれです。
「芝居をするか! 逆上しているこの最中に
俺は何を言っているのか、何をしているのか自分でもわからない(中略)
衣装をつけろ、白粉をぬれ お客様はここに金を払って笑いに来るんだ。」
(歌詞抜粋)
オペラのストーリーでは、この後の芝居の中で恐ろしいことがおこるのですが、カニオは、衣装に着替えることで気持ち(エゴ)をコントロールし、全く違う自分になろうとしています。
人間は本来、いろいろな面を持っていると思います。
二重人格どころではない、それこそ多重人格。
多重人格は、普段意識しないようなところにある無意識の世界に存在するのだと思います。
素晴らしい経営者などは、何もしなくとも多重人格を見事に処されているのを見た事があります。
しかし、本当はどんな人でも素晴らしい可能性を秘めているのです。
ただ、普通の人はなかなか自由には扱えない。
意識しただけでは引き出せない。
準備を重ね、最高のものを引き出すための最後の一押しが衣装なのではないかと思っています。
着るものを選ぶとき、この3点に気をつけています。
1、なりたい自分に近いもの。着ると気持ち良いもの。
2、似合うこと。(信用できる他人にチェックしてもらうこと)
3、内容にふさわしいもの。
あともう一つ付け足すなら、着るタイミング。
サラブレッドは、鞍をつけると気合が入って、顔つきまで変わり、走る状態になります。
イチロー選手は、ユニフォームを着ると、常にいつもと同じ行動をし、徐々にスイッチを入れていくそうです。
私はいつも本番前、衣装をつけるタイミングを決めています。
早く着すぎても疲れてしまうし、ギリギリでも気持ちが間に合いません。
人前で話すことなども含めて、自分が何か表現するとき、そのイメージにあったものをチョイスすることも、大事な仕事の一つではないかと思っています。