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ライフワークとしての音楽を考えていきます

力を伸ばす「他流試合」

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どうしても習いたい先生がいました。
 
その先生は、一流のピアニストを続々と輩出していて、私も彼に習えば同じようになれると思ったのです。
私が「習いたい、習いたい」としつこく言っているので、ある日紹介してくれる方が出てきました。
 
レッスンに行って言われたことは
「広いとこ(ホール)で聴かなきゃ(実力は)わからないな」
「上手い人と一緒に弾きなさい」
でした。
 
ある日伺うと、中学生の女の子が「今度オーケストラと共演する」と弾いています。それがまたセンス抜群で上手なのです。
 
また次には、コンクールで本選会を控えた男性ピアニストが汗みどろで弾いています。
 
先生は「上手な人がどうやっているか見なさい」と言って、私のレッスン時間の前後に、聴かせたいお弟子さんを入れていたのです。
 
今度は、「ホールを予約したからそこで弾きなさい」と言われます。
そこには5~6人のオーディションや演奏会を控えた優秀なお弟子さんたちが弾きにきていました。
レッスン室で弾いているより音がのびてホールの方が上手に聴こえる人がいます。
先生の言っていることがだんだん分かってきました。
 
その中に入って弾くと、自分の足りないところが良く見えてくるのです。
自分の未熟さが情けなくて帰ってから夜も眠れなくなるほどでした。
 
私にとって、これは「他流試合」だったのかもしれません。
 
先生は、直接言うより体験させて競わせることで分からせようとしていたのですね。
 
もちろん、音楽的なことや技術的なことも教えてもらえたのですが、今でも思い出すのは、「下手でもなんでも開かれた場所でどんどん弾きなさい」「上手な人がどうしているか知りなさい」ということ。
 
自分が居心地の良いうちは変化していません。
 
それまでの私は、ただレッスン室でさらっているだけ。
努力は必要ですが、外に比べると刺激は少なく、周囲は同じ流派の人ばかりです。
 
音楽は武道ではありませんから試合も何もないかもしれません。
しかし「他流試合」。
これが私の今までのやり方を変えました。
 
その先生は2004年に倒れられ、そのまま62歳の若さで急逝されました。
 
先生の言葉が今でも脳裏によみがえってきます。
 
「真面目なだけではだめよ。どんどん外に出なさい。」

今の私は異種格闘技の世界に足を踏み入れているように思えます。他流試合は続いています。

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