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「運命」本当のテーマとは なぜ休みが必要だったのか

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ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。
 
「ダダダダーン」という有名な最初の一撃。
「運命が扉を叩く」とも言われています。
 
実は、譜面を良く見ると、ダダダダーンの前に休符が書かれています。
音を聴いているだけではわからないと思います。
実際の演奏会では指揮は最初の1拍目を空振りしているのですね。
どうなるか・・・
「ダダダダーン」ではなく・・・「ウン、ダダダダーン」となるわけです。
 
なぜわざわざ最初に休符を書かなければならなかったのか?
普通に一拍目から始めればいいのに。
彼が意地悪で変人だったから?
彼は、ゆで卵の硬さが気に食わなくて、癇癪をおこし、頻繁にお手伝いさんを変えているくらいですから・・・。
 
しかし、来るべきところに音がない、という不自然さ。
 
ホラー映画を見てると、一瞬シーンとしたところって怖いですね。
 
「次・・・絶対来るっ!」
と身体を硬くして身構えてしまいます。
来るべきところに音が来ないと人間はストレスを感じ、緊張するのです。
 
このフレーズ、何度も何度も繰り返し出てきます。
たたみかけるようなストレスを聴衆にかけていきます。
そして、究極の緊張感の中に演奏家を叩き込む。このストレスこそが音楽のエネルギーを生むのです。
 
さて、なぜベートーヴェンはここまでして、音楽にストレスをかけなければいけなかったか。
 
さて、この運命。ダダダダーンだけではありません。
 
「苦悩を突き抜け歓喜へ至る」
これが完結して初めて本当の意味での運命が完成します。
 
始まりからやっと20分ほどたったところ、最後の部分にかけて、「苦悩を突き抜け歓喜へ至る」が明確になるところがあります。
ここが運命の一番大事なテーマなのです。
 
そこにいたるまでの音楽が重苦しく、ストレスが強ければ強いほど、もがき苦しめば苦しむほど、最後の歓喜が鮮烈に感じられます。
 
ベートーヴェンの苦難に満ちた人生と、自分の人生を思い比べ、人々は深く共感するのでしょう。

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