疾走するリーダーシップ
年明け1月7日、小澤征爾さんの記者会見を見て、残念に思われたファンの方が多いのではないでしょうか。
しかし「半年で戻ってきます」という力強いお言葉にほっとしました。
小澤征爾さんは母校のOBで、何度か指導にいらっしゃっています。
何年も前ですが、息子さんを連れていらしてたこともあり、図書館で、学内では見かけないホリの深い顔立ちの人がいるなあ、と思ったら、小澤征爾さんが後ろから来て
「ホラ、ここが図書館だよ」
と案内していました。
現在俳優としてご活躍の小澤征悦さんだったのですね。
息子さんに母校を紹介したかったのでしょうか。
ご家族をとても大事になさる小澤征爾さんのお人柄がよく分かりますね。
学生オーケストラの指導にいらしていたときのことです。
小澤征爾さんは、全く偉ぶらず、何度も指揮台を降り、オーケストラの中に入っていきながら、とても細かいところまで丁寧に出来るまで指示していました。
そして全体の出だしでは必ず「せ~のっ!」という掛け声をかけるのです。
あんなに外国で大活躍の巨匠なのですが、日本人として親近感がわいてきます。
練習中の小澤征爾さんは情熱のかたまりのようで、その気迫にみるみるオーケストラの音が変化していきます。
指揮者がオーケストラの中で一番テンションが高く、しかし、命令調で怒鳴ることなど一度もないのですが、一肌も二肌も脱いでいる姿を見せることで、団員が巻き込まれていく様子がよく分かりました。
練習の休憩中も休んでなどいません。
あちこちとエネルギッシュに走り回りながらご自分から積極的に、先生方、関係者、同級生の方々などとたえまなく、しかも「よう!元気?」とフレンドリーに握手したり肩をたたきながら話しています。
あちらから挨拶してくるのをどんと座って待っているということはありませんでした。
それが、良く見ていると短い時間の中でかなりたくさんの人とお話ししているのです。
ピアニストで、以前指揮者であった方が
「短時間でたくさんの関係者と話さなくてはならないことが、もう会社の社長さんみたいで、自分には向かないと思った。それに疲れた。指揮棒を置くことにした。」
とお話ししてくださったことがありました。
次に話す方が控えているところで、失礼になるかと心配で会話を続けてしまうことは私もよくあり、パーティやレセプションでも結局少人数の方としかお話しできないことはいつも反省点なのです。
せまいリハーサル室にたくさんの人の熱気で冷房の効きがあまりよくないせいか、かなりの暑さ。
練習後、上半身裸になって「暑い~!」と言いながら走り回る姿は、小澤征爾さんらしい天衣無縫な天才を感じさせました。
この前の記者会見では
「皆さんに申し訳なくて」
と気遣いをみせていらっしゃいました。
でも、今はゆっくり休んで、また元気な指揮で素晴らしい演奏を聴かせていただきたいですね。