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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

日本においてもデータ保護への取り組みが強化されている理由

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 Dell EMCでは、グローバルおよび日本におけるデータ保護の取り組みに関する調査をおおよそ2年おきに行っている。その結果を見ると、日本でのデータ保護への取り組みがここ最近かなり進んできているようだ。ITの新しいソリューションへの取り組みは、日本は欧米より遅れているのが普通だ。日本が先行しているのは、RPAの活用くらいかもしれない。データ保護に関してもこれまではどちらかと言えば遅れ気味だったが、最近はだいぶそれを取り戻しているようだ。

 調査結果によると、日本ではデータ保護のソリューションを導入する企業が、2年前には1%しかなかったが、昨年の調査では37%へと一気に増えている。先進的にデータ保護に取り組むリーダー企業に至っては、2年前には0%だったものが18%にまで増えているのだ。日本においても「データ保護の成熟化が進んでいるようだ」と言うのはDell EMCのDPS事業本部長のDSC00061.jpg今井 浩氏だ

 成熟化が進んだ要因としては、企業が扱うデータの量とその価値が変わったことが挙げられる。調査によれば、データ量は2年で588%も成長しているのだ。さらにデータの価値に関しても、「データには非常に高い価値がある」「データですでにマネタイズできている」と答えている企業の割合を合わせると80%程になる。

 一方で調査した日本企業の66%において、過去12ヶ月で何らかの障害を経験している。障害については、現状のデータ保護の仕組みや運用ではデータ復旧ができなかった企業が26%あり、これは前回の4倍に増えている。データを紛失した企業も25%あり、これも2倍だ。さらにセキュリティ侵害、外部からの攻撃、内部犯行によるものも無視すできない状況になっている。つまりデータの価値は高くなっており、何らかのデータ保護の仕組みは導入しているものの、現状の仕組みでは障害に対し十分な復旧体制となっていない状況にあるようだ。

 調査結果の中でちょっと面白いのが、67%の企業が複数ベンダーのデータ保護ソリューションを採用しており、複数ベンダーでの対応はシングルベンダーの場合より8%高い確率で障害に遭遇しているというもの。これはシステムが多様化する中、それぞれ個々に複数ベンダーのデータ保護ソリューションを導入している現状があり、それがデータ保護の環境を複雑化し、結果的に障害の発生率を高めていると予測される。これ、何事もシンプル化することが重要だと示唆する調査結果とも言えそうだ。

 もう1つ興味深い調査結果をピックアップすると、データ保護でのクラウドの活用だろう。今回の調査では、パブリッククラウドを何らか利用している日本企業は39%あり、そのうち98%がデータ保護の一部としてそれを利用している。ノートPCなどを含むモバイルデバイスのデータ保護、SaaSアプリケーションのデータ保護、災害対策などで主にパブリッククラウドが使われているようだ。

 他にもデータの長期保存でも使われている。パブリッククラウドを採用した理由としては、63%がスケーラビリティを挙げている。グローバルではSaaSの保護がトップで、デバイス保護での利用はそれほど高くない。日本では今後SaaSの利用が増えると思われるので、パブリッククラウドを利用するデータ保護においては、複数のSaaSのデータをいかに効率的に保護するかといった、新しい利用タイプも出てくる可能性がありそうだ。

 こういった現状があり、そこにある課題感に対し、Dell EMCでは包括的なデータ保護のソリューションを、1つのプラットフォームでかつシンプルなアーキテクチャで提案できることが強みとなる。さまざまなシステムのクラウド化は、本来IT運用をシンプルにするものだったはず。ところが実際には、オンプレミスに加えてクラウドが追加され、さらにはマルチクラウドだったりもすることでむしろ複雑化を増しているのも確かだろう。そうなった際に、どうやって運用なりをシンプル化できるのか。Dell EMCのソリューションを活用するかどうかに限らず、彼らが言うように1つのプラットフォームとシンプルなアーキテクチャは鍵となりそうだ。

 そう考えると、複数ベンダーのオープンなソリューションを適材適所で選ぶのもいいけれど、いっそ包括的なソリューションをもつベンダーに統一し、そのベンダーにロックインされるのも良いのではと思えてくる。ユーザーが自らの意思で選択したベンダーにロックインされる、これは決して間違った選択ではないのではとも思うところだ。

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