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ハイブリッドクラウド戦略を進めるマイクロソフトが提供する2つのエッジ側のソリューション

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 クラウドファーストでパブリッククラウド使うのが大きなトレンドだったが、ここ最近はエッジ側が注目されており、いまやどのクラウドベンダーもエッジ側のソリューションを発表するに至っている。

 Amazon Web Services(AWS)さえも、昨年オンプレミスでAWSのクラウド環境を実現する「AWS Outposts」を発表している。そんな中、いち早くハイブリッドのソリューションを打ち出してきたのがマイクロソフトだ。Azure Stackを提供して、AzureのIaaS、PaaSをオンプレミスで実現する製品をOEMのベンダーと一緒に提供している。

 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部 本部長でクラウDSC00155.jpgド部門の責任者である浅野 智氏は、マイクロソフトは他のベンダーよりもハイブリッドクラウドで大きくリードしていると言う。マイクロソフトは創業時からオンプレミスのビジネスを展開しており、その実績は他のクラウド専業ベンダーにはない。さらに現時点でIaaSだけでなくPaaSにまで踏み込んで提供できているのもマイクロソフトだけ。マネージドデータベースのサービスも他はまだやっていない。OSからアプリケーションレベルの仮想化まで、エッジ側でもクラウドでもシームレスにできるのがマイクロソフトだと浅野氏は言う。

 ハイブリッドクラウドを謳うのであれば、オンプレミスで動くものと同じエクスペリエンスがクラウドでも利用できる必要があり、さらにその上でクラウドとオンプレミスを自由に行き来できるようにする必要もあるとも言う。この点もマイクロソフトのハイブリッドクラウドの戦略が、他社をリードする点になる。

 また新たにAzure Stackに加えて、Azure Stack HCIの提供もする。これは従来Windows Server Software-Definedとして提供してきたものを、リブランディングして提供するものだ。Azure Stackはオンプレミスでパブリッククラウドと同じものを提供しようとするもの。これに対してAzure Stack HCIは、Azureとの親和性、連携性の高い仮想サーバーの環境をハイパーコンバージド・インフラの形で提供するものとなる。

 パブリッククラウドのAureは、最新のソフトウェアをサービスとして提供する環境。サーバーレスや機械学習などの新しい技術も簡単に使え、試してみて使わなくなればすぐにクローズできる。DevOpsなどで、クラウドに最適化した使い方も容易だ。そしてパブリッククラウドでサーバーレスやコンテナの利用が広まれば、オンプレミスでもそれらを実行したいとの要望が出る。たとえばデータに対するGDPRの規制や、大量のデータをパブリッククラウドへ送るとなれば時間とコストがかかるという理由があるからだ。そういった要望に対する回答がAzure Stackになる。オンプレミスで新しい技術をクラウドと同じように使えるようにするのだ。

DSC00161.jpg 一方Azure Stack HCIは、パブリッククラウドのAzureのサービスがそのまま全て動くわけではない。Windows Serverの仮想環境であるHyper−Vの上で動かすようなものを動かすの基本となる。高速でスケーラブルな仮想化基盤として動き、そのために必要なものが揃っている。そのため、どちらかと言えば既存のレガシーなシステムを動かすのに向く。「マイクロソフトとして、もっとも推奨できるオンプレ版の仮想基盤がAzure Stack HCIになります」と言うのは、クラウド&エンタープライズビジネス本部 プロダクトマネージャーの佐藤 壮一氏だ。

 このAzure Stack HCIは、Nutanixなどの他のHCIとはどう違うのか。他社のHCIでは、仮想化技DSC00169_DxOPsp.jpg術のライセンスやHCIソフトウェアのライセンスなどが別途必要になるが、Azurwe Stack HCIはWindows Server 2019 Datacenter エディションのライセンスに必要なものがすべて揃っている。結果的に他より安価に導入できる。また、「パーシステント・メモリ」など最新のハードウェア技術にも対応しているのも優位性の1つだと佐藤氏は言う。最新技術が使えることは、高性能な処理にもつながる。つまり「安いだけなく速いものも作れるのが、Azure Stack HCIになります」と佐藤氏。

 さらに他社のHCIと違うのは、管理性のところだ。「Windows Admin Center」を使って、コンソールでのコマンド操作などを必要とせずにGUIベースで簡単に管理できる。この管理ツールは、Azure Stack HCIだけでなく、Azureと連動させた管理が可能だ。たとえばパブリッククラウドのAzureと連携して、バックアップをとったり災害対策構成をとったりが容易に実現できる。このAzureのクラウドとの親和性の高さが、HCIに「Azure Stack」と名前をつけた理由にもなっている。

 マイクロソフトが、ハイブリッドクラウドの戦略で他社をリードしているというのは確かだろう。オンプレミスでの実績部分は、なかなかクラウド専業ベンダーが追いつけるところではない。とはいえ、そこだけを見ていると足下をすくわれかねないだろう。オンプレミスとパブリッククラウドが別々に存在するのではなく、いかにシームレスに連携できるか。ユーザーとしては、システムがどこで動いていても良い。クラウドの利便性と拡張性があり、オンプレミスのコントロールと安心感があれば良いのだ。そういう見え方をするソリューションに、きっちりとハイブリッドクラウドを進化させられるか。それのできにより、クラウドベンダー同士の今後の勝負の行方が決まるのではないだろうか。

 

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