Oracleは次世代IaaSでAWSをライバル視
日本はシルバーウィークだけれども、Oracle OpenWorld 2016の取材でサンフランシスコに来ている。今年のテーマはクラウド。SaaS、PaaS、IaaSの3本柱を強調して、とくにIaaSではAmazon Web Services(AWS)への対抗心を露わにして見せた。
●ラリーはIaaS推し
初日夕方の会長兼CTOのラリー・エリソンの基調講演では、次世代のIaaSでAWSよりもCPUコア数もメモリもSSDストレージも多くて、値段は安いIaaSを提供することを強調。これまでIaaSは、SaaS、PaaSを使っている顧客が、既存のシステムもクラウドに移行するために仕方がなくやるよ的な感じだったのが、一転してIaaSにも力を入れる。AWSは尊敬しているけど、それに対抗するとい表明した。
まあ、簡単にAWSの牙城が崩せるわけではないだろう。Microsoft Azureだって苦労している。IBM SoftLayerは思ったほど追いかけ切れていない感じもする。Oracleについては、AWSからすればまだ気にもしていない存在かもしれない。価格が安いだけではなかなか太刀打ちできないだろう。鍵となるのは、これまで長い間に培ってきたエンタープライズITでのノウハウ、知見をクラウドで発揮するところか。それが評価されるようになれば、保守的な日本市場の企業にとっては、Oracleのほうが選びやすいというところありそうだ。
今回はIaaSを前面に出した形にはなっているけれど、個人的にはOracleのクラウドの主戦場は、やっぱりSaaSでありPaaSだと思う。今回IaaS推しなのは、むしろSaaS、PaaSから目をそらすための戦略なのかと思ってしまうくらい。SaaSを軸に、PaaSと一体化してクラウドを提供する。場合によってはそれと全く同じものを顧客のデータセンターでも動かし、利用はパブリッククラウドと同じに使える。このあたりは、今後、レガシー系の企業にもを評価を得るところではないだろうか。それに加えてのIaaSという感じで、少しずつIaaSの利用も増えるかもしれない。もちろん、価格を下げることを目当てに、大規模に移行する企業が出てこなくもないだろう。しかしそのあたりは、結局は割引合戦となってりして、結局は体力とリソースのあるAWSの有利は動きそうもない。
●マーク・ハードは2025年に向けた新たな予測を追加
さて、Oracle OpenWorld 2016の2日目の基調講演では、CEOのマーク・ハード氏が講演を行った。昨年のOpeWorldで行った2025年に向けた5つの予測を行った。
1)本番アプリケーションの80%がクラウドに移行する
2)SaaS市場で80%を占めることになるプロバイダは2社だけになる
3)開発とテストは100%クラウドに移行する
4)すべてのエンタープライズ・データは、クラウド上でバーチャルに保管されるようになる
5)エンタープライズ・クラウドはもっとも安全なIT環境になる
これらに加え、今年はさらに以下の3つを新たに予測して見せた。
1)2025年にはIT予算の80%はクラウドへの投資となる
2)企業のデータセンターの利用は80%減る
3)IT予算の状況が抜本的に変わり、メンテナンス保守が20%で革新のために利用されるのが80%になる
これらの予測は、多少の誤差はあるかもしれないが、おおむね実現しそうな予感がする。実際、テスト、開発をクラウドへという意向をもつCIOは、2016年にすでに40%に上るという調査もあるようだ。2025年を待たずに、これらが前倒しで実現していくものもありそうだ。
ところで、この中で個人的に実現が難しいのではと感じているのが、今年追加した予測の3番目、革新の予算が80%になるというもの。これはこうなれば大きくビジネスの状況は変わりそうだけれど、現実はまだまだITシステムのお守りに手間も時間もとられるのではと思うところだ。
とはいえ、これくらいのIT投資の割合になっていかないような企業は、結局はビジネスが伸びずに市場からいなくなるだろう。そう考えれば、この予測も現実になるのかもしれない。日本の多くの企業が、IT投資の80%を革新に使うという状況に、そこに早い段階で行き着ければいいのだが。