パブリッククラウドを使ったほうが有効性があるけど、移行できない理由
今日取材していた中で出た、パブリッククラウドに行きたくてもなかなか行けないとの話がある。
パブリッククラウドだと、インフラサービスで利用している仮想化ハイパーバイザーとOSの組み合わせなどで、情報漏洩につながるような脆弱性が発生すると、早急にパッチ当てなければならなくなる。マルチテナントで使っているわけで、侵入されたユーザー経由で他のユーザーの情報が漏洩するとかなるとえらいことなので、これはもう待ったなしの対応に。つまりは緊急のメンテナンスになり、金曜夕方に告知して月曜深夜に緊急停止でメンテナンスなんてことにるわけだ。これはクラウドベンダーの都合であり、ユーザーはこういったベンダーのルールに従うしかない。
その脆弱性が、自分が使っているOSに関連するものでなければ、このパッチ当てメンテナンスは自分の環境には関係ないことになる。仮に影響が多少あるとしても、ワークアラウンドなどで対策し、計画停止で安全にパッチを当てたいと考えるのも普通だろう。こういったことが自分たちの都合でコントロールできないと、24時間365日動かし続けるようなアプリケーションを、パブリッククラウドには移行することがなかなかできないことになるわけだ。
一方で、パブリッククラウドでないと、季節変動やキャンペーン時の急激なアクセス増への対応などが効率的にできないのもわかっている。その面からはパブリッククラウドを使いたいけれど、運用面からは使えない。ジレンマに落ちいているユーザーも多いようだ。
この運用のところの課題を解決するのは、先日OracleのPaaSのイベントでも話題になっていた、パブリッククラウドと同じ環境を自社データセンターでも使えるようにする「Oracle Cloud Machine」だ。これであれば、ユーザー側での自由で柔軟なコントロールの課題は解決できる。似たような仕組みはMicrosoft Azureにも「Azure Stack」がある。こただしれらは、残念ながら無限のコンピュータリソースを提供できるというパブリッククラウドのメリットを享受できない。
もう1つの課題解決方法が、IBM SoftLayerのベアメタルサーバーの上で、自前で仮想化を動かす方法だ。2月にIBMとVMwareがパートナーシップを結んでいるが、この組み合わせでベアメタルサーバーの上でVMwareを利用するのであればサブスクリプションの形で利用できるようになった。ベアメタルサーバーであればパブリックででも運用できるので、自由に運用のタイミングがコントロールできる。まさにプライベートクラウド的な環境を、パブリックに構築できるというわけだ。
クラウドがこれだけ存在感を増していても、まだまだ大手SIが手がけるシステム開発のほとんどは、オンプレミスで納品されている現状もあるようだ。この柔軟で自由な運用を実現したい問題を解決することが、クラウド率を上げることにつながるとの指摘もある。BtoBでのクラウド市場の本格的な拡大は、まだまだこれからなのかもしれないと思うところだ。