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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

弥生はゆるやかなるクラウドへの移行戦略ってところかな

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 ITベンダーでクラウドを意識しないところはないだろう。たとえ今、パッケージのビジネスが順調でも、今後クラウドを無視できるとは考えていないだろう。

 会計ソフトの弥生もそんなベンダーの1つだろう。弥生のビジネス自体は、2014年4月の消費税増税、Windows XPサポート終了という追い風もあり順調。量販店などにおける会計のアプリの販売シェアでは本数ベースで68.7%、金額ベースでは81.7%と圧倒的なシェアを確保した。弥生にとっては「マーケットシェアは重要だけど、重視しているのは成長率だ」と弥生の代表取締役社長である岡本浩一郎氏は言う。で、本数ベースの成長率は152%、金額ベースは218.9%となっており、金額ベースは業界平均を上回る成長率があるのが現状だ。

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 パッケージのビジネスは順調だったけれど、クラウドの進捗はどうか。「弥生にとってクラウドは目的ではありません。あくまでも手段。顧客にメリットを提供する手段です」と岡本氏。そのために2つのアプローチを撮っている。1つが既存のパッケージの「データ」のクラウド化。もう1つが業務ソフトを利用していない顧客向けに、クラウドアプリを新規に開発していくというもの。こういうアプローチをとることで、すぐには既存のパッケージビジネスとカニバらないようにするわけだ。

 クラウドのアプリケーションとして提供しているのが2012年9月に開始した「やよいの店舗経営オンライン」、2014年1月からは「やよいの白色申告オンライン」も提供する。データのクラウド化のほうは、2003年からデータバックアップサービスを提供しており、2013年10月からはそれを弥生ドライブという新たなサービスに進化させている。最終的には、クラウドにあるデータベースにアクセスできるようにする。こちらは2015年の夏を目指して開発中とのこと。いずれのサービスもプラットフォームにはMicrosoft Azureを利用している。

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 やよいの白色オンラインについては、利用者の約8割が満足だと評価している。初めてでも簡単、なんとかできたという声が上がっている一方、要望として売り上げ、経費の集計ができるようにして欲しいとの声もあった。コレを受け、集計レポート機能を新たに5月に追加している。

 2014年秋には、いよいよ「やよいの青色申告オンライン」の提供を開始する。内容的には、既存のパッケージのアプリケーションとかぶるだろう。弥生側の期待としては、パッケージ版では数年に1度しか更新しなかったりサポートサービスに入らないようなユーザーをこのクラウドのサービスに引き込めればということになる。オンプレミスのパッケージ版を現時点で使いこなしているような顧客については、当面はクラウドに移行しなくていいという戦略になりそうだ。

 さて、数年に1度の更新やサポートサービスに入らないようなユーザーをクラウドに移行させるにはどうしたら良いのか。そのためには、日常的にクラウドそ使うと便利だという情況を作り出すことだ。そのための武器となるのが、今回発表された「YAYOI SMART CONNECT」というサービスだ。これは外部のアプリケーションと弥生のアプリケーションを連携させるもの。たんに連携させるのではなく、YAYOI SMART ENGINEを経由することで仕訳データの自動変換をするというのが肝となる。

 銀行取引やクレジットカードデータ電子マネーの利用履歴、さらにはTwitterのつぶやきまで取り込んで、自動で仕訳に返還して弥生のアプリケーションに取り込むことができる。こういった機能があれば、日常的にやよいのクラウドなどを使いたくなる。使い始めれば便利で使い続けることになるだろうという戦略だ。

 既存の顧客が急激にクラウドに移行してしまうと、短期的には売上げが下がることになる。パッケージでうまくいっているベンダーは、なるべく緩やかな移行を望む。とはいえ、あまりパッケージとクラウドが並行する期間が長くなれば開発投資も分散することになる。どこかの時点で軸足を移すことになるのだろうがその判断はなかなか難しそうだ。こういう悩みをかかえるベンダーはかなりいるのではないだろうか。

 鍵は、少額でも払い続けて、使い続けたくなるクラウドサービスにできるかどうか。それは、既存のオンプレミスをたんにクラウドに載せるだけではダメだろう。クラウドならではの価値が欲しい。今回のYAYOI SMART CONNECTでは、クラウドならではのポイントとして自分の過去履歴だけでなく他のユーザーの利用履歴なども使って自動で仕訳返還してくれる。こういったところが理解されれば、使いたくなるクラウドサービスとして評価されることになるのではないだろうか。

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