どのクラウドサービスをどういう観点で選ぶべきか、その判断スキルもIT担当者には重要だな
クラウドというと、すぐにSalesforce.comやAmazon Web Servcesを思い浮かべてしまう。これらは実績も多いし、記事やブログなどの情報を目にすることも多い。とはいえ、国産のクラウドサービスはじつはたくさんある。しかしながら、まだまだユーザーへの印象はあまり濃いものではないというのが現実だろう。
個人的には、国産ベンダー応援モード。なので、クラウドサービスとしては、サイボウズのkintoneなどに期待大。そのため自分からアプローチして取材し、記事も書いている。もちろん富士通や日立、NTTコミュニケーションズなど、多くの国産ベンダーがクラウドサービスを展開しているのは知っている。けれど、なかなかその中身にまで踏み込んで取材し、 記事にする機会には恵まれない(大手国産ベンダーからは、フリーランスの記者だとなかなか記者発表会に呼んでもらえない現実も、そういう機会がなかなか訪れない原因の1つ)。
そんな中、今日はNTTデータ イントラマートから記者発表会の案内をもらったので、新しいクラウドサービスの発表会に参加してきた。同社はすでにクラウドのシステム基盤であるintra-mart Accel Platformというサービスをクラウドでも提供してきたが、今回はそれをベースにPaaSの形で新たにサービスを展開する。
発表会の中で驚かされたのが、NTTデータ イントラマートのintra-martは、クラウドのサービスとしてすでに4,500社に採用されていること。実態としては、NTTドコモや日立ソリューションズなど、同社のパートナー企業からそれぞれのブランドでOEM提供されている。とはいえ、国内実績で4,500社というのはかなりの数字。今後「クラウド」と言えば、NTTデータ イントラマートを真っ先に思い浮かべるべきかもしれない。
今回のPaaSのサービスは「Accel-Mart」という。システム基盤のintra-mart Accel Platformベースの実行環境、BPMやワークフロー、外部システムとの連携ツールなどを含む開発基盤、さらにはオンプレミスのintra-martですでに動いているアプリケーションをクラウドで提供するという3つをセットにしたものだ。とりあえずは、各社ごとに仮想化環境の上にこのPaaSを載せ、プライベートクラウドのサービスとして利用できるようにする。今後は、パブリッククラウドでも同様なPaaS環境を提供する。NTTデータ イントラマートの中山 義人社長は、「IaaSがコモディティ化して顧客ニーズはPaaSに移る」と言い、今後ハイブリッドクラウドが現実化する際にはPaaSが重要な役割を担うようになると指摘する。
Accel-Martは標準でシステム基盤とアプリケーションサーバー、データベース、開発環境、管理ツールなどが提供される。アプリケーションパッケージは、オプションとなる。当初は、NTTデータ イントラマートのグループウェアである「intra-mart Accel Collaboration」と、富士ゼロックスの文書管理システムである「intra-mart Documents」、スミセイ情報システムの経費、旅費精算などのワークフローである「intra-mart Accel 皆伝!」、TISの購買調達システムの「intra-mart Accel FAST購買」という4つのアプリケーションがオプションで用意される。
今回のPaaSのサービスで、個人的にユニークだなと感じたのは課金の部分。プライベートクラウドのプランとしてはTiny、Small、Medium、Largeと4つのタイプが用意されており、フルで利用できるEnterprise版でそれぞれ月額196,500円、273,500円、426,500円、547,000円となっている。一瞬、高いかなと思うが、想定してる利用者数規模がTinyで100人まで、Smallが300人、Mediumが700人、Largeが1,000人まで(それ以上は別途見積もり)となっている。人数で割れば1人当たりは 2,000円くらいから500円くらいになる。これならかなりお得感が出てくる。
この人数規模の数字はあくまでも目安。アクセス量としては、人数規模の10%程度の同時利用を想定している。1,000人規模の会社でも、アクセスが少なければTinyで契約することも可能だ。自社のアクセス量がどのくらいで、結果的にどのタイプでいけばいいかは、人数や利用するアプリケーションによって、最初の契約時に個々に判断することになる。
多くのPaaSのサービスでは、ID単位での課金が多い。これだと、社員数が増えるとかなりのコストが積み上がり断念することになる、という声が大規模な顧客からよく聞こえてくる。しかし、この料金体系ならば適切なコストに落ち着かせることができそうだ(この料金はプライベートクラウドのもので、パブリッククラウドの場合にはシンプルな固定価格になるようだ)。
クラウドのサービスはいまやさまざまなものが登場している。それぞれにポイントがあり、どの部分を評価するべきかは、その会社がクラウドを将来に亘ってどう使って行きたいかで判断することになる。とはいえたくさんの選択肢を十分に比較して検討するのではなく、どうしてもちまたで声の大きなベンダーのサービスに関心を寄せがちだ。ここはしっかり、自社にあったサービスがどんなものか、今一度じっくり検討してから選ぶべき、そんな時代になっているのかもしれない。