オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

どんなものを電子書籍にする?

»

 佐々木さんも先に紹介しているけれど、先週はeBookProの活動で2つほど電子書籍を作ったという発表を行った。

 1つは、日本マイクロソフトからコンテンツ提供を受けたMicrosoft SQL Serverの技術ドキュメント、『正しいSQL(方言を排除したSQL分の記述方法』『トランザクション管理』の2冊。どちらも紙の書籍にするにはちょっと分量が足りないかなという分量だが、EPUB化してiPadやSONY Readerなどで閲覧するのなら問題ないボリュームだ。海外ではあらゆる分野の本が電子化されているが、日本はまだマンガやライトノベル、一部の小説やビジネス書が中心といったところだろうか。技術書もちらほら見かけるが、まだまだ数も少ないように思う。sql_s.jpg

 今回この2冊の電子書籍、コンテンツ提供を受けたこともあり無償での提供となっている。今後も順次SQL Serverを利用しているエンジニアの方が参考になるようなドキュメントを、引き続き電子化しシリーズとして提供する予定だ。そんなこともあり、Webサイトからのダウンロード提供だけでなくPodcastによる配信も行っている。iPhone/iPadで読みたいという方は、一度Podcastの購読登録をしてもらえれば新しい電子書籍コンテンツが追加されれば自動で端末に新刊が届くことになる。幅広く情報を届けたい際にこの方法は、かなり有効なものだと思っている。

 今回提供を開始したようなIT関連の技術ドキュメントは、じつは電子書籍化に向いていると考えている。その理由は、

  • IT系ということで、読者に対象となる方たちが比較的電子書籍といったものに対する理解度が高く、嫌悪感もあまり持っていない
  • iPadやSONY Readerなどの電子書籍を読むのに必要な端末環境を持っていることが多い
  • 技術書の多くは書籍になるとぶ厚くなるが、電子書籍ならばその厚さも気にする必要はない
  • 特殊な領域の技術書だと読者層も限られるので、高額になり紙の書籍として出版する敷居も上がりがちだが、電子書籍ならば分冊するなども可能。気軽に始められ、最初に多くの数を印刷する必要もないので出版の敷居を下げることができる
といったことが挙げられる。

 現状、電子書籍を販売して、ビジネスとして成り立たせるのはなかなか難しいものがある。その一番の理由は、電子書籍を読む環境が十分に普及していないこと。電子書籍が増えれば、おのずとそれを読みたいという人も増え端末も普及するのだが、電子書籍のバラエティもまだまだ少ない。出版者側もそうすると、力をいれて出版点数を一気に増やすには至っていない。ということで、買うほうもコンテンツ提供するほうも様子見状態。

 これに対し、IT系の技術書であればもともと電子書籍に興味をもっている人たちの層がターゲットになり、ビジネスとして成り立つ可能性は高いと思われる。ということで、eBookProではこの領域での電子書籍出版には、かなり注力している 。今後も積極的に、コンテンツを増やしていきたいところだ。そして、現状、国内での電子書籍のビジネスにおいて、市場で売ることだけを考えるとちょっと悲観的な予測が立ってしまう。電子書籍を必ずしも売らないでも成り立つビジネスモデルも、検討する必要があるなと考えている。

Comment(0)