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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

不景気の今、人材育成はなかなか難しいけれど企業としてはやるべきことだよなと

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 2011年の初っぱなからなんだけれど、あいかわらず景気の先行きは不透明な状況だ。明るい話よりも厳しい話のほうが多く、どうやってそのような中を生き抜いて行くかは、企業にとっても、個人にとっても大きな課題だろう。

 昨年、そういった厳しい状況の中にあって、やっぱり人材の育成って大事だよねって話を聞く機会があった。しかしながら、大事だとは言うものの、企業においては人材育成って軽く見られているイメージもある。どうにかしなければと言う割には、実際にはあまりコストも手間もかけていないのが現実ではないかと。

 これ、思慮深い経営トップなどは、決して人材育成というものを軽くは見ていないはず。ところが、現場で実際に人材を育成しなければならない中間管理職などは、目の前の仕事をとにかくこなすことに精一杯で、結果的に軽く見ることになっているのでは。なるほど、たしかにそうかもしれない。コストを削減して利益を追求するあまり、余分に人は投入できないし十分な時間もないのが現実。そんな中では、なかなか人を育てることもできないばかりか、とにかく即戦力を欲するのは仕方がないことだろう。

 ここのブロガーでもあるイシンの大木さんは、いっそ「人事部がないほうがいいのかもしれない。人事部が面接も育成も実施するから駄目なんじゃないか」との意見をのたまわっていた。これ極端な意見にも聞こえるけど、なるほどなと思うところもある。人事と現場の乖離なんてことは、そこそこの規模の会社で中間管理職をやったことのある人なら、必ずと言って直面している苦い経験の1つではないだろうか。

 人事では、現場仕事のディティールが分かっていないので、どうしても世の中の「一般」に合わせようとしてしまう。世の中の一般というのは、モデル化されたものであって、そう簡単に自社に合うものではない。ITに関してはITSS(IT skill standard)やUISS(Users’ Information Systems Skill Standards)といったスキル標準がある。これに自社のエンジニアのスキルを照らし合わせてみて、自社のスキルの低さに愕然とするなんてことも多いようだ。これ、とくにITSSのほうの話らしい。で、結局は、ITSSを人材管理にだけ使って、人材育成には活用できないなんてことに。

 とはいえ、ITSSなどのスキル標準が悪いという話ではもちろんない。ようは使い方の問題。標準に人材のスキルを当てはめようとするのではなく、自社はどういうスキルの人をどうやって活用していきたいかを考え、それに対し現状の人材スキルがどうなっているかをまずは把握する。その際の1つの指標にいわゆるスキル標準があると考えるべきなのだろう。

 その上で、なにが足りないからどういう研修や教育をするかを考え、その結果をまた反映してスキルの現状を把握し直す。つまり、ここでもいわゆる人材育成のPDCAサイクルみたいなものを回すことになるのだ。この人材育成のPDCAのサイクルを回した結果を、人事評価に反映するというのが、人材育成における人事部門の役割なのだと思う。

 そう考えると、人材の育成を担当するのは、企業の中でも優秀で会社の将来を考えている人が行うべきだろう。そうなれば、人事制度や採用活動が「人材戦略」というものになっていくはず。とはいえ、現実的には、優秀な誰かが1人でやれるものでもない。とうぜん、現場と人事がいっしょになって人材戦略を作り、人材戦略の本来の主役である個々の社員という人材も、率先してそれに関わっていけるような仕組みが欲しいところだ。

 この人材戦略をPDCAで回して人材育成につなげていくための仕組みのところでは、ITシステムがそのサポートで活躍することになるはず。ようは人材の見える化を行い適切に管理することは、通常の業務システムと基本的な構造は大きく変わるものではないはずだから。さらには、個々の人材が目標管理をしてキャリアパスを考えられるようにする中なんな仕組みが必要だろう。

 とはい、大木さんらに訊くところによると、現場のニーズにあったいいツールはまだまだ少ないとのこと。さらに、じゃあ現場に合わせてツールをカスタマイズしましょうという話しになると、それには大きなコストがかかることも多いとか。というわけで、ここの部分には、まだまだITにとってのビジネスチャンスがありそうな気配がする。知人の会社では、ここのところの現場ニーズに則した人材育成ツールの提供を開始していたりもする。

 とにもかくにも、管理というものから戦略に発展させるには、トップのコミットと現場の意識改革、そして人事と現場のギャップを埋めることが大事なんだなぁと思った次第。振り返って自分の会社では、それがどれだけできているのか。零細企業規模でちょっと大袈裟に聞こえるかもしれないが、人材育成、人材戦略の実現は、弊社にとっても今年から今後への大きな課題の1つだなと思っているところだ。

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