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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

電子書籍ならではの使い方

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 電子書籍のビジネスを開始しますというリリースを打って以降、さまざまな問い合わせが続いており、日々打ち合わせやら提案、取材、さらにはセミナーの講師など忙しい毎日となっている。

 まだまだ、柔らかい話も多く、ビジネスに発展する案件は数多くある問い合わせの一部に過ぎない。とはいえ、リリースを打った直後だけでなく、3ヶ月ほど経過したいまでも継続的にさまざまな問い合わせがあるのが現状。電子書籍に対する関心が、市場で高まっているのだなということを実感するところでもある。

 ここ数ヶ月、いくつもの話をしてきた結果、傾向もなんとなく見えてきた。たとえば、出版社なりを発端とした話は、遅々としてなかなか進まないことが多い。どうしても既存の紙の出版物をベースに電子書籍を考えてしまうので、電子化がプラスアルファの手間やコストと見なされやすく、そのぶんの回収が可能かどうかの検証に時間がかかる。最初はけっこう勢いがあっても、途中で足踏みするようなことに。もちろん出版社関連の人たちの中にも先進的な考え方を持っている方は多いのだが、電子書籍のビジネスがうまくいかない理由を探しているのかなと思えてしまう状況もちらほらあり、悲しくなることも。

 これに対し、企業なりが新しいマーケティングツールや顧客との接点となるチャネルだと捉えてくれると、電子書籍がらみの案件も意外と素早く進む。マーケティング活動の中では、好むと好まざるとに関わらず、かなりの種類、量の紙の印刷物を作っている。それを電子に置き換えるとメリットがあると判断してくれることが多いのだ。単純に考えても印刷コストが削減でき、意外と大きなメリットとなるのが在庫管理、配送コストの削減あたりで、これには好感を示してくれる。

 それと、多くのマーケティング担当者が、これまでのオーソドックなマーケティング手法からなんとか抜け出したいと考えている状況もあり、いまなら話題性のある電子書籍を活用できればと発想しているきらいもある。そんな中で、好評なのが流行のソーシャルネットワーク的なものと電子書籍の連携だ。紙やPDFと異なり、Webに近いことができる電子書籍はこのあたりともかなり相性がいい。なので、単に電子書籍を作りましょうという話だけでなく、既存のWebサイトやソーシャルネットワークとからめて、統合的な情報発信の新たな方策として提案する機会も増えている。

search ちなみに、電子書籍ならではの便利な機能というものはたくさんある。とはいうものの、この図に示したような例は、かなり便利な機能ではあるけれど、ユーザーからはまだまだあまり活用されていないものかもしれない。これは、ePub版のJaZZJapan誌をiPadのiBooksで表示しているところ。画面上でタップして、テキストを選択しそこから簡単に検索が行える。書籍の中のどこにその単語が登場するかがすぐにわかり、もちろんそこにジャンプできる。なので、通常は電子書籍に索引は必要ないのだ。そして、選択した単語は、GoogleやWikipediaでもすぐに検索できる。わからない単語や知らない人物の名前が登場したなら、それについてすぐに調べることが可能だ。ちなみに、この機能はリーダー側に実装されているものなので、ePubファイルを作成する際にはなんら制作側で意識する必要はない。

 紙ではなかなか実現できなかったけれど電子ならということとして、少ないページでも書籍を出版できるというのも受けがいい。通常なら紙の書籍を作るとなると100数十ページのボリュームがどうしても必要になる。そうなれば、値段も1冊2000円近くなり、それの制作、販売で収支を考えると、それなりの部数が売れることが必要になる。あまり数多く売れる見込みのない分野だと、作りたいと考えた人がコスト負担することになりかねない。要は、制作協力費であったり、できあがった書籍の買い取りなどという方法で販売とは別にお金のやりとりが発生することに。その際には、一声で300万円くらいのお金が動くことも多々あるようだ。こうなると、簡単には書籍を作ることは難しい。

 これが、電子書籍なら100万円前後で書籍化できる場合が多い。手をかけなければ、さらに安くできることあるだろう。また、1冊のページ数がかなり少なくても書籍になるというメリットもある。たとえば、100数十ページ、10章からなる書籍を、3章ごとくらいに分割して3冊のシリーズで展開する、なんていうことが電子ならば簡単にできるのだ。これだと出版のスピードも速いし、作る側の負担も小さいところから始められる。さらに、内容の改訂が発生するような書籍であれば、それぞれの分冊ごとに改訂できて、分割していることはさらなるメリットにもなる。

 配布方法についても、電子とはいえ書籍なので、電子書籍専用の書店から販売しなければならないかといえばそんなことはない。自社でダウンロード販売してもいいし、ソフトウェア販売サイトから配布する方法だってある(コピーコントロールなど、解決すべき問題はあるかもしれないが)。iPad、iPhoneの場合には、ちょっと裏技的にもなるがPodcastを利用する手もある。Podcastによる配布は課金をどうするかという課題はあるものの、一度ユーザー側で登録さえすれば、毎月自動的にコンテンツを追加することも容易だ。なので、広報誌や機関誌のような定期刊行物の配布には最適な方法かもしれない。

 頭を柔軟にして既存の紙の印刷物という呪縛から解放されれば、さまざまなアイデアが生まれてくる。実際に、音楽や映像がらみの事柄とコラボレーションする企画などがいくつもあり、いまは、そういったことを考えるのがけっこう楽しかったりするのだった。

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