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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

何が本物で、どれが偽物なのか

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 さて、先週はSalesforce.comのイベントCloudforceに出展&参加していた。ここで話題になっていたのが、CEOのベニオフ氏の発言である「偽物クラウド」の話だった。

 @ITの大津さんも上記の記事で書いているが、先日のサンフランシスコでのOracle OpenWorldでのOracle CEOラリー・エリソンの「Salesforce.comのアーキテクチャが10年遅れている」という発言に、ベニオフ氏の発言は真っ向勝負をかけるもの。Oracleがその際に発表したOracle Exalogic Elastic Cloudを、「偽物」と言い切ったというわけだ。

 エリソン氏は仮想化技術を使って「Elastic(伸張性、柔軟性)があるのがクラウド・コンピューティングであり、Salesforce.comのマルチテナントの仕組みはこのElasticがないから駄目だよねと言い、一方のベニオフ氏はクラウドは「箱じゃない(箱を買うことじゃない)」と言い、仮想化はコンピュータの利用を効率化できるかもしれないけれど、それでクラウド・コンピューティングができるというわけでもないと言う。そして、クラウドはソフトやハードから解放されることこそが重要だと主張するのだった。

 このクラウドの定義を巡る争い、さていったいどちらが本物なのだろうか。個人的にはどちらの主張も間違ってはいないかなと思っている。ようは立場の違いみたいなもので、クラウドのEnablerに今のところ徹しているOracleと、いち早くSaaS、PaaSと展開してきたSalesforce.comというそれぞれの立場から、別々のベクトルで主張を展開しているようなものか。

 ちなみに、ベニオフ氏は仮想化を否定しているようにもとれるが、実際はOracleが従来から主張しているデータベースの仮想化技術はおおいに自社サービスでも活用しているはずだ。そもそもこのエリソン氏とベニオフ氏は師弟関係であり仲が良いことは周知の事実。そう考えてしまうと、両者のこの罵り合いはちょっと出来レース的なところもあるのではと思えてくる。結果的にこの2社がクラウド・コンピューティングの注目のプレイヤーと市場に思わせることには、少なくとも成功しているわけだし。

 個人的には、クラウド・コンピューティングの本物がSalesforce.comでもOracleでもどちらでもいいかなと思っている。というか、クラウドなんてどうでもいいのだ。ようは、自分たちが解決したい課題に向いているコンピューティング環境はいったいどれなのという話しであって、本物のクラウドをユーザーは求めているわけではない。仮にそれが偽物でも、自社の課題を解決してくれるのならそれを選べばいいわけだ。自社でプライベートクラウドの環境を構築したければOracleのソリューションを採用することになるだろうし、あるアプリケーションを楽に運用したいと思えばSalesforce.comを選ぶことになるだろう。

 実際、今回弊社がCloudforceに出展することになったのは、どちらかと言えば後者のような課題を解決したかったからだ。我々のような弱小ISVがアプリケーションをパッケージ化して売りだそうと考えた場合に、PCなりにインストールして使ってもらおうとすると、そのサポートの負荷は大きな負担となる。さまざまな環境でテストをする必要があるだろうし、何かトラブルが発生すれば顧客のもとに赴かなければならない。それが、Salesforce.comのようなプラットホームであれば唯一の環境でテストするだけで提供できるし、サポートもWeb上で完結する。

 じつはこのことは、Oracleのエリソン氏も同様な指摘をしている。同社のOracle Exadata Database MachineやExalogic Elastic Cloudはハードウェア・アプライアンスの形で提供されており、環境は1つに統一されている。なので、パッチも1種類でいいし、世界中のユーザーが同じ環境を使うことになるのでサポートの効率は大きく向上するのだと主張している。立場は違えどもメリットの方向性は一緒ということか。

 我々がSalesforce.comのPaaS環境を選んだもう1つの理由は、開発の容易さもある。マルチテナンシーなためにさまざまな制限があるのも事実だが、それを理解した上でそれに抵触しないようなアプリケーションであればかなり高い開発効率が期待できる。また、今回は、我々の給食栄養管理のアプリケーションと、介護施設の入居者管理をするコーネッツさんのアプリケーションを連携させるということも行った。このような他社アプリケーションとの連携も、同じSalesforce.comのPaaS上にあるということで、ほんの3日ほどでできあがってしまったのだ。スタンドアローンのサーバーにインストールするタイプのアプリケーション同士では、さすがにこうも素早くはできなかっただろう。

 クラウド・コンピューティングのどれが本物かではなく、ユーザーはなにが自分たちに適しているかを冷静に判断する必要がある。Salesforce.comもOracleも、さらにはMicrosoft Azureでも、それぞれに長所、短所があり、それらが世間でどう評価されているかではなく、自社がやろうとしていることにどれだけ合致しているかこそが重要なのだ。

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