オラクルのオープンソースへの取り組み
先日、オラクルがInnoDBの開発元であるInnobase社の買収を発表した。InnoDBは、GPLで配布されているオープンソースソフトウェア、MySQLの一部に含まれるデータベース技術として有名だ。
オラクルのニュースリリースによれば、今後もInnoDBの開発は続ける、そして、オープンソース・ソフトウェアに対するコミットを拡大していくとのこと。このニュースを読んで思い出したのが、先日のサンフランシスコでのCEOラリー・エリソン氏の発言だ。氏のキーノートセッションにおいて、会場からオープンソース・データベースに関する質問を受けた際の答えだ。
エリソン氏の回答は、以下のような内容だった。Linuxの成功とMySQLやPostgreSQLとは状況が異なる。Linuxは、オラクルはもちろん、IBMやSun、HPなど多くのベンダーが、さまざまな支援をしている。実際のところ、現在Linux用のコードをもっともたくさん書いているのはIBMの社員であろう。そういった業界全体のサポート体制があることが、Linuxのビジネス分野における今日の成功につながっている。これに対して、MySQLやPostgreSQLはそういった状況にはない。これは大きな違いだ。自分としては、技術的にまだまだオラクルの優位性が高いという当たり前の回答よりも、このサポートの体制の違いは大きな要素だと感じていたので、至極納得させられた。
さて、間接的にだが、今回の買収でオラクルがMySQLをサポートするとも考えられる。MySQLのビジネスアプリケーションとしてのポジションが、一段階アップしたと捉えてもいいかもしれない。この買収のオラクルの意図は、いったいどこにあるのだろうか。オープンソースへのコミットであれば、なにもデータベースという分野ではなく、LinuxやJavaへのより一層の注力でもよかったはずだ。
考えられるのは、マイクロソフト対策だ。現状、オープンソース・データベースの主たる競合製品は、オラクルよりもむしろSQL ServerやAccessのはずだ。オラクルのようにハイエンドからローエンド市場へ進出するのは、コストも体力も必要な割にはうまみは小さい。ひたひたと迫りくるマイクロソフトをエンタープライズ市場で迎え撃つのは容易でも、ミッドからスモールというマイクロソフトの得意とするマーケットで迎え撃つのはたいへんだ。
たしかに、MySQLに手を貸すことで、マイクロソフトの攻撃をかわすことができるかもしれない。しかしながら、枯れていて技術者にもファンが多いOracle7やOracle8の必要な機能に絞り込んだストリップバージョンを無償、もしくは格安で(ただしサポートは有償で)提供するという攻撃のほうがかなり有効だと思うのだが。これは、そう簡単に(決断)できることではないのかもしれない。