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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

上流工程での品質向上の施策フィードバック型V字モデル、W字モデルと得られる品質

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フィードバック型V字モデル、W字モデルともウォータフォール開発における要求定義や設計の進め方を指しています。W字モデルは、要求定義、設計のフェーズにおいてテスト設計(計画)を同時に考えることを指し、要求、設計の誤り、曖昧さ、漏れを早期にみつける可能性を高めます。たとえば、基本設計と同時に対応する結合テストを計画します(テストの実施はテスト対象であるプログラムが完成しないとできないので、どのようなテストをするか決めます)。

フィードバック型V字モデルは、ある工程で混入した欠陥のうち一定割合は同じ工程のレビューで発見されるが、いくつかはレビューで見逃されるという前提を持ちます。次の工程で前の工程のレビューで見逃された欠陥がまったく発見されなければ、次の工程に問題があるとして、その成果物を精査します。たとえば、基本設計で混入された欠陥(たとえば30件)の多く(たとえば25件)は基本設計レビューで発見されますが、いくつか(たとえば5件)は見逃してしまうという前提にたっています。もし、見逃されたはずの基本設計の欠陥が詳細設計や詳細設計のレビューで1件も見つからなければ、詳細設計やそのレビューが十分に検討されていないとし、詳細設計や基本設計の成果物を再検討します。

フィードバック型V字モデルとW字モデルは同時に採用できます。東京証券取引所のarrowheadの開発が事例の1つです。@IT情報マネジメントで「ユーザ主体開発」として紹介記事が公開されています。

W字モデルもフィードバック型V字モデルも品質向上のための手段です。では、品質向上によって何が得られるのでしょうか?一般には、ビジネス的価値の向上でしょう。つまり、W字モデルやフィードバック型V字モデルの実施には、その最終目的であるビジネス的価値の向上との連続性が必要です。言い換えると、~を実現することによりビジネス的価値を高めることができるからW字モデルやフィードバック型V字モデルを採用するというつながりが必要です。その具体例として、東証のarrowheadの開発事例を聞き、参加者それぞれが自身の携わるソフトウェアの品質とビジネス的価値の関係を考えるセッションを脇谷氏と企画しました。ソフトウェア品質シンポジウム2011の企画セッションとして催されます。

セッションでは、arrowheadの開発に携わった東証側のプロジェクトマネージャ宇治氏と開発ベンダである富士通側のプロジェクトマネージャ三澤氏にご登壇いただき、事例をいただいた後、両氏にいくつか質問をぶつけてみたいと思っています。また、会場から意見も出していただきながら、ビジネス的価値と品質の関係を再考できればと思っています。

9/9(金) 9:15~ 100分間で早稲田大学で開催されます。セッションの詳細はこちら

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