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システム/ソフトウェアの性能やスケーラビリティを競争領域に

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AmazonのXMLDB, GREEのMySQLの運用、GoogleのBigtable等、ストレージ/ネットワークまわりのインフラはまだまだ競争領域といえるようだ。私自身、それらの文書を興味深く読んでいることが多い。AmazonのXMLDBの話はThink ITの記事に、GREEのMySQLの話はITmediaの記事に、GoogleのBigtableは論文から情報を得ることができる(他にも事例や記事があると思う)。

システム性能が競争領域となっているのはWebを通じたサービスだけではない。次の文献によると、東京証券取引所の次世代売買システムでも注文受付レスポンスやスケーラビリティが市場での優位性の一端を担うことが書いてあり、具体的性能目標として、注文受付(10ms以下)、スケーラビリティ(分間ピーク件数の2倍のキャパシティを確保)に関する記述がある。鈴木 義伯, “東証次世代システムの取り組みについて”, 情報処理学会誌 Vol. 49, No. 4, p. 398~403 (2008/4)

これらのサービスでは通常の情報システムよりも大きなスケーラビリティが要求される。スケーラビリティ確保のために、たとえばデータベース管理用ソフトウェアをメモリ上で動かすことで大量のリクエストをさばいたり、検索頻度の高いデータ項目に検索時間を短縮するためのインデックスをはったりする。検索のされ方が固定的(一定のパターンに従っていてあまりかわることがない)であれば、汎用的なデータベース管理用ソフトウェアではなく、そのパターンに特化したソフトウェアで実現する場合もある。

このほかにも、ルータ等の通信用ソフトウェアやデータベースマネージメントソフトウェア、ミドルウェア、OS等、性能の高さが競争優位性の確保につながる分野は数多く存在する。

もちろん、基盤となるソフトウェアを非競争領域と位置づけ共同で開発する事例もある。携帯電話用のプラットフォームも非競争領域としているといえるだろう。JasParやAUTOSARのような車載インフラソフトウェアの共同開発を目的の1つとしている組織もある。

ここでも書いたが、競争領域と非競争領域の判断は定期的に見直しながら、早めに検討しておくべき内容ではないかと思う。競争領域、非競争領域を意識せず投資をすると、情報システム部門や情報システム自体をコストセンタとしてしか見れなくなってしまう。このあたりは日経のコラムでも述べられている。

ここを読んで下さっている方々の組織やシステムはどうだろうか?

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