オルタナティブ・ブログ > 森崎修司の「どうやってはかるの?」 >

計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

Yahoo! Search BOSSからソフトウェアの協調/競争を考える

»

少し前の話になるがYahooがWebページ検索の検索対象データと検索アルゴリズムの一部をAPIとして公開したそうだ。Search BOSS(Build your Own Search Service)という名前のとおり、提供されるAPIを利用すればYahooの検索結果とは異なる検索結果を得られる検索サービスを作ることができるそうだ。

詳細はYahoo! Search BOSSの紹介をご覧いただくとして、YahooがCrawlerや検索アルゴリズムの一部等、基盤となる部分(プラットフォーム)を提供する。個人やサードパーティがそれを利用して新たな検索サービスを作ることができる。

開発対象のうち競争力強化につながらない部分(基盤部分)を協調領域として協力して開発し、その基盤部分の上で付加価値をつけて競争する場合がある。これらを協調領域と競争領域と呼ぶ。このような動きはソフトウェアに限らず、かなり前から実行されている。標準化や統一規格もこれに準ずると思うし、プログラミング言語とそのライブラリもある意味協調領域を提供していると考えることができるだろう。比較的最近の例として、車載ソフトウェアのOSやミドルウェアの一部を協調領域としたAUTOSAR(欧州)やJasPar(日本)での検討がある。それらOSやミドルウェアの上で各社が魅力的なアプリケーションを開発し、競争する。

Yahoo BOSSの場合、協調領域を1社が提供する等、上の例とは若干異なる部分もあるが、ここではプラットフォームを協調領域、プラットフォームを使った新たなサービスを競争領域と考えてみたい。Google Maps APIも同様である。ここで書いたNokiaがSymbianをオープンソースとした動きも近いだろう。

これらプラットフォームは本質的でない部分を実装するのがたいへんなせいで実行に移せず眠っているアイディアを掘り起こす可能性がある。たとえばWebページを収集するCrawlerを実装するのはかなり骨が折れるが、それ単体では検索サービスを提供できない。Google Mapも同様で、地図データを個人やそれほど大きくない組織で用意するのはなかなか難しい。地図と位置情報というプラットフォームが提供されることにより、これまでにないサービスが生まれていると思う。

ご自身の周辺で協調、競争領域を作るとしたらどのあたりにあるだろうか。開発規模が一定の大きさ以上になると協調領域と競争領域の分割は必須になると考えている。

私の場合、普段の活動はソフトウェア開発における協調領域の拡大につながるのではないかと考えている。

Comment(0)