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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

PowerPoint2003がプレゼンに向かない理由

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仕事柄、講演という位置づけで話をさせていただく機会や学生さんの研究発表や学位論文発表を指導することが多い。それらや代々師匠から伝わる指南を踏まえると、スライドの切り替え時のつなぎの言葉がプレゼン全体の理解度を大きく左右しているように思う。私が学生だったときにもその点を何度も指導していただいた。プレゼンの内容を意図通りに伝達するという点において、短期間でもっとも効果をあげやすいのは、スライドの間のつなぎ部分の説明を中心に準備/練習しておくことだろう。(本当は全体にわたって何度も練習することが大事なのだが。。)

聴講者は3枚前のスライドに書いてある見慣れない言葉を思い出すのは難しいと言われている。あるスライドから次のスライドにどのようなつながりがあるかをプレゼンタが説明してくれなければ話を聞いているほうがついていくのは難しいだろう。

MacのプレゼンソフトのKeynoteやPowerPointの発表者ツールでは、手元のPCの液晶と聴講者に表示するスクリーン等に異なる画面を出すことができる。手元の画面に現在のスライドと次のスライドの両方が表示されると、スライドのつなぎを意識しながら次のスライドへ切り替えることができ、非常に役立つ。

KeynoteやPowerPoint2007の発表者ツールではつなぎをしゃべるための支援をしてくれるのだが、Powerpoint2003の発表者ツールは次のスライドやその次のスライドが表示でき、いいところまでいっているのだが、発表者ツールの左側に表示される前後のスライドのサイズや解像度を変更することができない。普段プレゼンの際に使うであろうノートPCの画面(12インチ程度)では、次がどのようなスライドかをプレゼンタが認識できないことが多いように思う。個人的にも「拡大鏡ツール」を使うなどいろいろやってみたが期待される効果は得られなかった。

私は新しい機能は気になるが不具合の影響が怖いタチなので、これまでOffice2007は仮想マシン上で利用してきた。このエントリのタイトルに書いているにも関わらずプレゼン用のノートPCではOffice2003を使っている。長時間の講演やつなぎの準備に十分に自信が持てないプレゼンをするときにはノートPCを2台ならべて1台は聞いてくださっている方むけの画面として、もう1台は次のスライドとつなぎの言葉のメモが書かれた自分用のスライドを表示させている。PCの準備が難しいときには、紙に印刷して次のスライドとのつなぎを書いている。

なお、ここで対象としているのは、技術的な提案、結果、考察を事実に即して述べるタイプのプレゼンテーションであり、熱意も必要なのだが内容を正しく伝えることに重点が置かれるタイプのものである。

コミュニケーションやプレゼンテーションにおいて、非言語的な(資料の内容やしゃべるセリフではない)部分が言語的な内容よりも大きな影響を与えているという実験結果がある。その結果を踏まえれば、プレゼンでは堂々としゃべったりアイコンタクト等の非言語的な部分をトレーニングすることもおろそかにはできないと思う。しかしながら、ここで対象とするようなプレゼンテーションでは、内容を整理して説明することが求められるものであり、それを聞き手に正しく理解してもらうことも求められる。たとえば、システム開発プロジェクトの計画を報告するプレゼンは、感動的なプレゼンであることに越したことはないが、リソース等の制約の中できちんとプロジェクトを完了させる計画やリスク対策が聞いている人の頭にすんなりと入っていくように提示されることのほうが期待されている。このエントリではそのようなプレゼンを対象としている。

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