オルタナティブ・ブログ > 森崎修司の「どうやってはかるの?」 >

計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

ソフトウェア/システム請負開発の接客業的側面

»

不特定多数の顧客以外というと少し範囲が広くなるが、システムインテグレーションや特定仕向けのシステム/ソフトウェア/機器開発では、プリセールス、進行中、クロージングにおいて技術的側面、接客業的側面の両側面があるように思う。

RFPが出て業者選定がおわるまでは当然のことながら、外部設計(外部仕様)や要求仕様を確定していく際、進捗報告の際にも、接客業的側面が現れるだろう。市場が成熟し技術がこなれてきて、同業他社の層が厚くなれば当然のことながら、技術的側面だけでなく接客業的側面が競争力に与える影響も大きくなるだろう。もちろん、技術的側面やサービスとしての優位性を出していかないといけないのだがそのあたりの話はまた別の機会にしたい。

ベンダ/サプライヤ側での経験のある方には次のような心当たりがあるのではないだろうか。要件を聞く限りデータベースはパフォーマンス、価格、信頼性のどれをとってもRDBで十分というような状況(もちろんXMLDBを使うこともできる)で「XMLDBだとかっこいいと思うんだけどなー」と発注側の担当者から少々無邪気な要望を聞いた場合、(A)「たしかに将来的にXMLDBのことは考えなければなりませんね。差し支えないようであれば理由を伺った上で持ち帰って検討します」という回答、(B)「いや。このシステムでは将来的にもXMLDBは必要にはなりません。パフォーマンス、価格、信頼性のどれをとってもRDBで十分と考えます。XMLDBにする根拠は何かありますか?」という回答があるだろう。担当者の人付き合いの好みにもよるが、(A)を接客業的側面から出てくる回答の例、(B)が技術的側面から出てくる回答の例とした場合、(A)の対応が求められることもあるのではないだろうか((A)の対応をしたとしても提案時にはさりげなく(B)へ誘導する)。

開発委託をした経験のある方は次のような心当たりがあるのではないだろうか。仮にどんなに技術的にすばらしいシステム、機器、ソフトウェアを納入できたとしても、その開発途中において、顧客を不安にさせないような進捗報告ができていなければ、最終成果物の魅力は減ってしまうだろう。もちろん、プロジェクトのコミュニケーションルールとして定義し、そのとおりにやっておけばよいのだが、ルールになくても「ここは報告していおいたほうがいいだろう」という局面はあるだろう。そういう局面ではなるべくコミュニケーションをとってくるPM(a)と報告する事柄がないときには報告をしないPM(b)がいれば、(b)の行動は接客業的側面から来ていると考えられるのではないだろうか。

両側面はバランスが大事であり、状況によっては(B)が接客業的に正しい場合があるだろう。しかしながら、技術的側面ばかりを追及するのではなく(A)のような回答についても検討することに損はないと思う。

私自身も今一度、接客業的側面について考えてみたいと思い、ふと自身の過去を思い出して書いた。

Comment(0)