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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

「Where2.0時代におけるリアルタイムプローブ情報の活用」公開デモ

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2/22, 23と開催され公開デモと講演会に参加してきました。ワールドビジネスサテライトで放送されるかもと聞いていたのですが未確認です。プログラムはこちら。プローブ情報というのは、位置情報とセンサーネットワークにより、分散した場所から統一的に収集される情報の一般名称で、それを集約することで有益な情報を得ることができます。有名なのが車から集まってくる渋滞情報や気象情報(たとえばワイパー動作の有無やタイヤのスリップ情報)の収集と共有による、渋滞回避や天候予測です。プローブ情報の活用は、現在注目されている分野の1つで、タイトルにあるWhere2.0というカンファレンスがあるほどです。

講演会やパネルディスカッション中のプローブ情報の話で私が気になった部分は以下のとおりです。(パネルディスカッションでは自動車で収集するデータについて主に語られていました。)

  • データ収集、共有のインフラが整理されつつあり、今後いろいろなビジネスモデルが検討されていくだろう。
  • 本田技研で実用化済のコンシューマ向け渋滞情報システムでは、自車のデータを提供すれば他車のデータが使える。利用者率(情報提供率)は90%後半と非常に高い。
  • 渋滞情報など現在はリアルタイムデータを使うことに主眼が置かれているが、蓄積データにも大きな可能性があるだろう(いつも使っている道の代替案の提示など)。
  • プローブ情報を使えば地図の自動更新ができるようになる。(新設の道等に低コストですばやく対応できる。精度があがれば車線の追加や減少の更新にも使える)
  • 右左折にかかっている時間を計測できれば、右左折時間を考慮したナビゲーションが可能(右左折に時間がかかっていれば、右左折回数が少ないルートを案内)。

また、経産省のページにあるとおり、高品質なソフトウェアを効率的に開発するための手法を検討していて、今回の「プローブ情報プラットフォームソフトウェア」の開発はその具現化の1つという位置づけだそうです。ソフトウェアや(公開)システム自身は、ソフトウェアエンジニアリング技術研究組合(NTTデータ、デンソー、トヨタ自動車、日本電気、日立製作所、富士通、松下電器産業)の方々の成果です。我々も2年度にわたり、その様子を拝見しながら知見の積み上げやリアルタイムのフィードバックを実施していました。その成果は、順次、外部発表していきます。実働部隊として、松村氏を中心に玉田氏や私もいろいろと知恵をしぼりました。ソフトウェアの開発体制やプロセスで特徴的と感じたものは以下のとおりです(ソフトウェアエンジニアリング技術研究組合ソフトウェアエンジニアリング部会部会長 勝又様、同評価ワーキンググループリーダ 塚本様、IPA SEC樋口様の講演から抜粋しています)。

  • 先進的なソフトウェアの請負開発であり、一般的な請負開発と比較して、要件定義、特に性能要求については試行錯誤の上で、つめていかなければならなかった。
  • 典型的なウォータフォール+マルチベンダ開発
  • 開発会社が(商流的に)フラットな立場にある。
  • 開発会社の開発文化/手順が異なる(たとえばエンタープライズ、組込みの混在)ため、管理情報の統合や進捗報告情報の統一がたいへん。

これだけの状況で遅延なく公開デモにこぎつけられたのは、やはり開発各社さんの技術力、熱意/努力だったのではないかと思います。私も要件がトップダウンに決まっていかない実証実験システムの開発をしたことがあり、その経験から思うのですが、既存システムの再開発や拡張などビジネスモデルが明確でトップダウンな開発案件と比較すると、今回のような先進的な開発案件にはモヤっとしているところが出てきているはずです。その部分に対して前向きに取り組んで得られた知見は、後々で大きくきいてくると思います。また、我々支援部隊からも今回の開発支援で得た知見は大きくきいてくるものと期待しています。

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