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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

要求シンポジウム@NTTデータ豊洲センタービル

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1/19にIPA SEC(ソフトウェア・エンジニアリング・センター)と株式会社NTTデータの共同主催による要求シンポジウムに参加しました。エンタープライズ系/IT系の要求獲得や要求仕様の作成プロセス、外部設計仕様などソフトウェア開発の上流に関する講演が5件と特別講演としてNICTA(National ICT Australia)の紹介がありました。

なかなか聞けないチャンスなので、このようなシンポジウムを今後も開催していただければと思います。都合により一部聴講できなかったので網羅性/公平性に欠ける、つまみ食い的な感想なのですが、

  • 複数の発表の中で、具体例を伴いつつ、情報システムの重要性が強調されていました。情報システムの欠陥により、CEOが引責辞職する等。いくつかのビジネス分野では、情報システムがビジネス上の完全な中心になりつつあり、その品質やリリースまでの期間の短さが与える影響が相当大きくなっている。(こう書くと今まで言われていたこととあんまりかわりのないような気もしますが)
  • リスクや求められるクオリティにあわせた品質を想定して、過度に高品質なものを求めるのはよくない。(菊島氏、角田氏のご発表)
    → 過去にプロスペクト顧客へのヒアリングをしていたころ、社内の試行的なシステムに対して「完全な自動化、高度な冗長化、拡張可能なシステムがほしい」等のバラ色の話を聞いたことがあります。気持ちはよくわかるんですけどね..
  • 調査結果として、RFPはもちろんのこと、要求仕様はなるべく発注者側(ユーザ側)が書いたほうが顧客満足度が高くなるという傾向がある。RFPが数行程度のメールで、ベンダからRFPをもらったり、要件確認書という形で要件定義をベンダにしてもらっていたりすることが多い。(角田氏のご発表)
    → 電話で「今、しゃべったような雰囲気をもとに絵にしてください。仕様とかも適当にいれて」という話をもとに提案書とRFPを作ったことがあり、これもよくわかります。発注者が自分で仕様を書くくらいだから、ベンダの作ったものとは無関係に満足度が高い、という指摘もあるかもしれませんが、確かに自分で書き下したもののほうがよくなるというのは想像がつきます。

エンタープライズ系/IT系では、業務に精通した部隊から要求が出て、ISと呼ばれる情報システムに精通した部隊で情報システムとして具体的な要求とする、というフェーズがあるのが通常で、ベンダ(SIer)までいれると三者でうまく連携していく必要があります。(空洞化とも呼ばれていますが)分業が進んでいるため、一次受けのベンダ(プライマリコントラクタ)から、インテグレーションとプロジェクトマネージメントをするベンダ(SIer)へ、そこからさらにプログラマへとアウトソースされていく場合もあります。もっと多段構造になっていたり、マルチベンダでの開発になっていたり、末端は海外へのオフショアになっている場合もありますが..

今回のシンポジウムで、「エンピリカル」という単語を2人の講演者の方が資料に書かれて、話をされていました。この調子で広まっていくといいなぁと思いました。1/17の午前中(とランチと午後少し)に、このシンポジウムでも講演をされたJeffery教授とBleinstein氏と私たちの研究グループとミーティングを持ち、我々のプロジェクトの近況報告と今後の連携についてミーティングしました。長くなったので、こちらについてはまた今度。

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