映画は誰のものか
※コメントで指摘されたとおり、現在の映画の保護期間は70年(第54条)でした。以下、あまり意味がないエントリになってしまいましたが、自戒のため、このまま晒しておきます。
「黒澤作品格安DVD 松竹作品でも販売差し止め」(産経ニュース)などで報じられているとおり、黒澤映画の著作権は黒澤監督個人に帰属することが認められました。すでに別の作品でも同様の判断が下されていますし、チャップリンの映画でも著作権がチャップリン個人に帰属するという判断がありますので、これは従来の判決を踏襲したものといえます。
これに対して、現在、制作される映画は、映画製作会社に著作権が帰属することになっています(著作権法第29条)。この点について、日本映画監督協会(映画監督の協同組合)が「映画の著作権を監督にせよ」という活動をしています。この解説によれば、「(1971年以前の)旧著作権法では映画の著作権者は監督だった」とのことです(よく読むと「明示されていないが、監督が著作権者となり契約に基づいて映画会社に移ると理解されていた」ということのようですが)。今回の判決も、当時は映画の著作権者は監督個人とみなされていたためと推測します。
映画の著作権が監督から製作会社に移った経緯についても、(映画監督側の見解として)上記に詳しく書かれていますが、映画に多額の投資をするのは製作会社ですから、著作権者が製作会社に帰属することがそれほどおかしなこととは思われません。自分で著作権を持ちたければ、自分で製作費用を出したり(工面したり)、著作権を監督に渡すような契約を結べばよいからです。たとえば、宮﨑駿監督は、宮﨑映画の著作者ではありませんが、共同著作者として表示されている「二馬力」という会社は、宮﨑監督の設立した著作権管理会社です。
しかし、今回の問題は保護期間です。個人の著作物であれば死後50年(第51条)、団体の著作物であれば公表後50年(第53条)となるので、個人の著作物にする方が保護期間が長くなります。であれば、製作会社が保護期間を延長させるための“技法”として、著作権を監督に帰属することを認め、(かなり強力な)契約により著作権(著作財産権)を製作会社に委ねさせるという可能性がありそうな気がしてきました。もともと保護期間が短い方が利用者に都合が良いと考えたわけではないでしょうから、映画監督と映画製作会社で“協調”すれば、すんなり法改正できるかもしれません。(※追記。その他の権利は認めてくれないでしょうが)
私は、保護期間延長に強く反対しているわけではないのですが、そんな技法によって保護期間が延長されてしまうとしたら、ちょっと「やなかんじー」((c)ロケット団)です。妄想であればよいのですが:-)