顧客を理解する上で、アンケートはどの程度有効か?
「顧客を理解するのが大切」と一言で言っても、どのように理解するかは、なかなか難しいものです。
アンケートを採るのは、一つの有効な方法です。私も講演や研修ではできる限り参加された皆様にアンケートを記入していただいています。
しかしアンケートだけではわからないことも多いのです。
ネスレ日本の高岡浩三CEOは、ハーバード・ビジネス・レビュー 2013年10月号の論文「消費者はデータから見えない」で、次のように述べておられます。
---(以下、引用)---
消費者の声を聞くことは否定しないが、ネスレが消費者にニーズを直接尋ねることはない。
….消費者は…自らが持つ潜在的なニーズに気づいていないため、言語化できないのだ。
….消費者になりきる。
商品やブランドになりきる。
そこから時代にマッチした仮説が導き出されていく。
---(以上、引用)---
消費者を相手にビジネスをしているネスレが消費者に直接尋ねることをしないのは、意外ですね。
では、どのように顧客を理解すればよいのでしょうか?
顧客は自分が知っている情報のごく一部しかアンケートに書きません。知っている情報の全てを書くのは不可能ですし、ネスレ日本の高岡CEOがおっしゃっているように知らないこともあるのです。
ですので、アンケート情報だけではわからないことが多いのも事実。
そこで業務用ミラーでシェア8割を占めるコミーは、実際に使われている現場を自ら見て、それを全社員の様々な視点で見て、知恵を出し合う仕組みを作っています。
どのようにやっているかというと、全社正社員14名+パート社員で毎年恒例の「一斉US(顧客満足)訪問」を実施。正社員+パート2人の一組で、一組10件の既存顧客を訪問、使用現場を写真撮影、話を聴き、丁寧に情報収集し、持ち帰った結果を全社員で議論、社内で徹底共有するのです。
では、私はオフィス永井でどのようにやっているか、というと、次の3つの方法でお客様の理解に努めています。
■お客様の状況の理解:予め会社ホームページで会社概要、経営方針、製品群、対象顧客などを理解し、さらにウェブや日経テレコン21などでお客様の市場の状況や過去の取り組みを押さえておく。(形式知情報ですね)
■定性的な理解:上記を元に、お客様と徹底的な議論を通じて理解していく。(これは暗黙知情報)
■定量的な把握:講演・研修ではできる限りアンケートを実施。(ふたたびこれは形式知です)
実際にお客様と対話することでわかることは、実に沢山あります。
一方で、品質管理のためには客観的なベンチマーキングが必要。そのためには同一基準で定量的な把握をする必要があります。この目的でアンケートを実施しています。
2013年度は、のべ2000名以上の方に31回の講演・研修を行いました。このうちアンケートは19回実施し、のべ800名以上の方にアンケートに回答いただきました。
こちらに書きましたように、総合満足度(NSI*)は87.8。
* NSI: Net Satisfaction Indexの略。アンケートの5段階評価で、「とてもいい」=100点、「いい」=75点、「まあまあ」=50点、「よくない」=25点、「とてもよくない」=0点に換算し、加重平均を取ったスコア。講演の顧客満足度を把握するために使用します
目標値として、毎回NSI 90を超えることを目指しています。2013年度は、アンケート実施19回中、11回はNSI 90をクリアしたものの、90以下は残念ながら8回ありました。この理由を、コメントと講演の様子を撮影した動画から探り、改善に努めています。
「測定できないものは、管理できない」と言われます。
当面はお客様との対話+アンケート調査の組み合わせで進めていますが、今後も色々な試行錯誤を繰り返していきたいと思います。
アンケートだけではどうしても限界があります。しかしアンケートが役立つ部分も多いと思います。