「愚直に積め」は、ビジネスのバイブル
オルタナティブ・ブロガーとして「キャピタリストの視点」を書かれている辻俊彦さんの「愚直に積め」を読了しました。
熟読しても2時間で読了できるこの本に、過去、様々なベンチャー起業を育成してこられた現場でしか得られない新規ビジネス育成の本質が詰まっています。
私は仕事で様々な新規ビジネス立ち上げを担当してきましたが、この本を読んでその経験を整理するきっかけをいただいたように思います。
他のオルタナティブ・ブロガーの方も書かれておられる通り、ベンチャー企業だけでなく、ビジネスやNPO等、何らかのプロジェクトに携わる全ての方々にオススメの本です。
現代のビジネス・パーソンのバイブルと言っても、言い過ぎではないのではないでしょうか?
私が特にマークをつけた箇所を引用させていただきます。これでもかなり絞っています。他の方の書評を見るとみな違った箇所を挙げておられますが、それだけ奥深い本である証左でしょう。
これら引用箇所を読み返すだけでも大変勉強になりますが、その前後のコンテキストを読むことで理解は格段に深まります。
---(以下、引用)----
(p.2)
・短期的に見れば現業を推進した方が収益性はいいので、新規事業が既存組織から生まれることはない。
・成功確率を上げる唯一の手段は、的確な人選である。.....(p.29)
・ベンチャー企業が最も注意すべきことは、顧客に過度の期待を抱かせないことであり、できないことは引き受けないことである。(p.30)
・ブランド(信用力)のないベンチャー企業が目指すべきは、1回限りの新規顧客を毎月獲得するよりも、過去に仕事をしたお客さまからリピートオーダーを獲得することである。(p.57)
・給料や家賃などほとんどのコストは、期間をベースに発生している。したがって、最小限の投資資金で利益を挙げるには、週100時間以上働くことが万人に共通の企業における成功法則だろう。(p.95)
・成長していく企業は、少しずつ「成長の罠」にはまり、ハイブリッド(雑種)ではなく純血化していく。....このような澱みを超えて改革を起こすには、異種との交配が欠かせない(p.101)
・責任感と自意識過剰は別モノである。...(「私にすべての責任がある」「私が決める」という)こういう言葉は、受身で経営者からは無責任と見える社員を生み出すだけである。....社員のモラールを問う前に、自らの責任感過剰に気付くべきだろう。(p.103)
・「組織のすべての人間を同じ方向に向かせることができれば、どんな業界でも、どの市場でも、どんな競争相手に対しても、いつも圧倒的優位に立てる」というのは、年商1000億円のビジネスをゼロから起こした成功者の言葉である。(p.119)
・悪いことは構造的な要因に基づく出来事、良いことは偶然の出来事、であるのが、通常である。しかし人間は逆に考えたがる。(p.135)
・多忙な反面、成果が挙がらない成長プロセス時期に、いかに基本に忠実にPlan Do Checkを実践していくかで、初めの8割を走り抜ける時間が決まる。(永井コメント:p.136の図「成功に至る企業の成長プロセス」も併せて是非ご覧下さい)(p.143)
・私は起業家に必要な資質は、「継続性のある卓越した実行力」と見ている。(p.151)
・成功は失敗であり、失敗は成功である。成功に安住してしまったら成長はない。失敗を経てこそ、成功のステージはレベルアップする。失敗に直面した時にやめない限り、次の成功が訪れる。確固たる信念を持ち続けることが、成功の機会を育み続ける。(p.176)
・たいがいの正義は相対的なものであり、単なる言い争いは何も生み出すことはない。....自らを正義の代弁者だと思った瞬間、人間は間違いを犯す。(p.183)
・周りの人はみんな全知全能の賢者だ、という前提で、現実に起こっていることの意味や身の処し方を考えるように努めている。...自らは無知無能の愚者であるから、常に学びの機会を与えられているし、すべての人は師匠となる。---(以上、引用)----
このような素晴らしい本を世に出された辻さんに感謝です。