日本のグローバル化は、二つのグループに分けて考えると分かり易い
新年から日本経済新聞で連載されている「YEN漂流」は、グローバル化が進む世界の中における新しい日本のあり方を考える上で、色々な示唆を与えてくれます。
昨日(1/15)の記事「YEN漂流 私はこう見る 日は簡単に沈まない」では、三菱東京UFJ銀行・畔柳信雄頭取のインタビューが掲載されています。
日本を代表する金融機関のトップが、グローバル社会での日本の対応をどのように考えているかを理解する上で、非常に参考になりました。
---(以下、引用)---
・グローバル化のなかで日本のモノ作りが存在感を高め、不良債権問題から脱し日本経済が復活した。....円の強弱で一喜一憂するのではなく国際社会での日本の役割を考える必要がある
・グローバル化は国際的な専門化につながる。ロシアは資源が豊富だが、お金を使うときには車を日本から輸入し衣料は中国から輸入する。日本は資源もなく内需は細っていく。そういう構造を企業が理解し、商社や金融が手伝いながらやっている
・日本が考えないといけないのは、もはやグローバル化は元に戻らないということ。そこでどうやるのが日本の潜在能力を一番生かし、日本人の幸福につながるだろうか。我々はそこでベストを尽くしたい
---(以下、引用)---
金融業のみに留まらず、世界全体の視点で日本の役割を定義し、その中でそれぞれの業界の行うべきことを洞察し、その中での金融業の役割を議論しておられるのは、素晴らしい見識だと思います。
実際、三菱東京UFJ銀行も、海外の証券会社を買収したり銀行に投資したりしていますが、これもこのビジョンを実現するためものです。
『グローバル化が進むことで、「専門化」という国境を越えた国際分業が進う』という指摘は、私も実際に勤務先(日本IBM)の中で実感しています。
例えば、私が日本IBMに入社した1980年代。営業業務(セールスが受注した案件の契約管理、受注入力業務、等)を行う課が全国の各営業所にありました。
数年前。日本IBMの全ての営業業務は沖縄にあるフルフィルメント・センターで一括して行う体制になりました。これにより、営業所からは営業業務の仕事は消えました。
そして現在、営業業務は中国・大連に移管され、日本からは営業業務を行う部署はなくなりました。
米国を含むIBM全社の購買統括部門も、IBM全体の中で一番活発に購買を行っている中国に移管されました。本社の担当役員も中国にいます。
IBMのアジア地域の人事関連業務は、マニラに移管されています。人事異動や退職等の業務は、メールや電話でマニラにいるIBM社員とやり取りして行っています。(人事部門自体は、日本IBMに残っています)
このように様々な業務が、地域特性を考慮して国境を越えて「専門化」していっています。
畔柳頭取がおっしゃるように、確かに日本の企業を、
・世界における日本独自の強みを活かすグループと、
・世界における日本独自の強みを活かせるように支援するグループ
といったように、大きく二つに分けて考えると、分かり易いように思います。
自分達はどの立ち位置なのか、改めて確認することは意味があることなのではないでしょうか?
参考までに、IBMでは『グローバリー・インテグレイティッド・エンタープライズ』(Globally Integrated Enterprise: GIE)という経営モデルを全世界で展開しており、IBMの重要な戦略の一つになっています。
これは、国の枠組みを越えて世界ベースで人やモノを最適配置してビジネスの最大化を目指す、という考え方です。
さらに、ここで得られた経験や知見を、今後グローバル化を目指すお客様の経営変革に役立てていただけるようにご支援していきます。
その意味では、IBM全体で見る場合は前者、日本IBMなど各地域の会社の場合は後者の立場である、と言えるかもしれません。