オルタナティブ・ブログ > 永井孝尚の写真ブログ >

ライフワークを持とう。ライフワークを究めよう。

資本市場もムーアの法則の終焉を織り込みはじめた?

»

本日(11/13)の日経金融新聞の記事『近づく「ムーア」の終わり』で、最近の株式市場がムーアの法則の終わりを織り込みはじめていることが書かれています。

従来、他社に先駆けて半導体の集積度を上げて市場に供給することで、半導体各社は収益を格段に向上できました。

しかし、この記事では最近この他社に先駆けた微細化が必ずしも株式市場で評価されていない事例を2つ取り上げています。

また記事では、コモディティ化の動きに加えて、ムーア氏自身が今年9月に

「(法則は)今後10-15年で限界が訪れる」

と語ったことも要因に挙げ、現在最先端の65ナノの2世代先である22ナノが節目になる、としています。

つまり、「原子の大きさは超えられない」という限界です。

ふり返ってみれば、急激な価格性能比の向上を何十年も継続してきた半導体が、コモディティ化の罠に陥らずにここまで発展できたのも、ムーアの法則に従って常に性能向上を実現し、全体の経済規模を拡大できたからである、と言えます。

しかしムーアの法則が突き当たると、IT業界全体で前提としてきたこのサイクル自体、大きな見直しが必要になります。

株式市場の動きは常に世の中の動きを先んじます。このケースも、ムーアの法則が破綻するかもしれない10-15年後を先行している、ということでしょうか?

記事では、ソニー元会長の出井さんの意見として出井さんの著書から

「(法則は)『速く安く大量に』の二十世紀型モデルの象徴」

という部分を引用し、新たな付加価値として「積層構造の半導体」が付加価値になり、これに伴って産業構造が変化するであろう、という出井さんの予測も紹介しています。

ムーアの法則は現在のシリコン半導体における価格性能比向上を述べたものですが、4ヶ月前に「ムーアの法則が限界に突き当たる日」に書きましたように、ムーアの法則を「半導体の処理能力」から「情報処理能力のコスト」に置き換えて考えてみると、この法則は機械式計算機の時代から100年以上継続して成立しています。

つまり、「情報処理技術は指数関数的に向上する」ということを何らかのイノベーションにより現在の半導体とは別のメディアで実現すれば、現在のシリコン半導体によるムーアの法則終焉後も、我々が継続して価値を享受できる、ということになります。

「ムーアの法則の終焉」という一つの現象も、ある片面からは「既存の半導体産業の成長の壁」、反対側の片面からは「全く新しい産業の機会の創出」と見えます。

どのようにこの課題に取り組むかは、今後10年間のIT業界の大きな課題であり、同時にチャレンジングな事業機会でもありますね。

 

ps. 尚、こちらにもありますように、上記はあくまで私個人の意見であり、会社の見解とは全く無関係です。

Comment(0)