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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

世の中の変化にどう対応するか?

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昨日、学士会でAIの講演があったので、ちょっと聞いてみた。将棋や囲碁の話にも言及した分かりやすい話だとは感じたが、全体として違和感があった。聴衆は学士会メンバーである。相応の教育を受けた方々であり、現在でも相応のレベルで活動している方もかなり含まれている。これにしては言葉を選ばずに言えば、子供だましの内容。もっと技術的な課題や、哲学的な問題点、更には例えば原子炉調査におけるAIの活躍の可能性などにも触れるべきではないか?もっとも、私は中座したので、その後そんな話があったのかもしれないが。

もう一点、違和感があったのは、この講師の考え方がコンピューターの能力という点に力点が置かれていて、しかも工学的な問題と明言していたこと。AIとは工学なのか?私から見れば、ソフトの問題であり、ソフトを作るから工学なのだろうが、その発想でいる限り本当の意味でのAIにつながらないような気もしている。もちろん私は専門性から言えば全くの門外漢で、多くの間違った知識や情報に基づいて発想しているに違いないのだが、この工学的な発想自体が、グーグルとトヨタの、或いは米国と我が国の違いの本質かもしれないと感じている。

AIによる、人間生活の変化はこれからも続くだろうし、常に議論になるいずれの時にか人間がコンピューターに支配される不安というのは、これから我々が真剣に向き合っていかなければならない課題だろう。英国のテレビドラマだったような気がするが、プリズナー・ナンバー6というドラマがあったのを記憶している、最後にこの収容所を支配するコンピューターを破壊するために、取られた手立ては、中枢のコンピューターに「WHY]とインプットすることだった。

人類の歴史は、常に大きな変化を繰り返してきている。そして、時間が経って、歴史家たちがそれを分析して、その大きな変革点を示していくという流れなのだろう。だから、今どうだということには本質的な意味はない。だが、私は今が人類の歴史の中で大きなターニングポイントではないかと感じている。

まず、これは少し前から起こっていることだが、経済のレベルで見ても、世界の経済におけるヘゲモニーが大きく変化してきている。もちろん引き続き米国は世界最大だが、これまで上位に登場してこなかった自由主義・資本主義ではない中国がその地位を拡大していること、それから明らかにインドなど所謂中進国の地位が向上していること、更にイスラム圏の占める地位が石油を押さえているからということではない形で大きくなってきていること、などなどである。

政治的には、20世紀の初め以降、人類は戦争を繰り返しながらも、何とか紛争を回避する方法を模索してきたし、そのために国際機関を様々構築し、更に環境面など国際的な協調を実現しようと努力してきた。基本的人権の重要性を標榜しつつも、差別的な考え方が残ってきていた米国においても、故ケネディ大統領の時代を経て、ある意味での本当の人類平等が実現したように見えた。

だが、努力むなしく、20世紀よりはるかに多い国際紛争が発生している世界情勢の中で、EUの試みは崩壊の端緒を迎え、ロシアはクリミアに侵攻し、米国はイスラム教徒に対する入国拒否・国連の人権委員会や温暖化にかかるパリ協定の否定・TPPの不参加など、国際的な協調路線と真逆に進みつつある。国際情勢とは、残念ながら国同士の関係であるが故に、一国が、特に大国が対立的な対応を取れば、回りの国もこれに応えてスタンスを変えていく必要がある。

つまり国際協調とは、ギリギリの我慢の過程のはずだが、それが機能しなくなりつつあるのが現実だ。その中で、我が国が欧州大陸諸国と協調して、この流れを止められるのか、それとも流れに身を任せるのか、更には流れを助長するのか、考えどころだとは思うが、明らかに現政権はこれまでの人類の努力には敬意を払わず、流れを助長する方向を向いていると感じる。

ただ、先に述べたように、経済面では世界全体のバランスが崩れつつあるのは事実であり、これをベースとした協調主義からの撤退、或いは対立の構図を作り出すということは、ある意味世界のパワーバランスの変更が行われる時が近づいているということではないか、と考えるわけだ。そしてそれは場合によっては我が国の存立にも関わる可能性があり、戦略的な対応が求められる。

中国は、習近平氏が権力を維持できるかどうか、抱えた腐敗・不均衡格差・経済の実質的な負の資産の大きさに不安を抱える。韓国は、大統領の弾劾とこれを踏まえた韓日関係が関心を集めているが、国家経済を支えてきたサムソンの経営危機など、より本質的な問題があり、国際機関の介入を避けることは難しいのではないか、そこに来て北朝鮮の暗殺事件、中国との関係を不安定にさせるものであり、一方で韓国と中国との関係にも溝が大きくなりつつある。台湾に独立的な思想の政権が生まれたことなども勘案すれば、東アジアの政治構造には、ゆらぎが生じつつあるのは事実で、わが国も慎重に情勢を見極めていく必要がある。

折しも、南スーダンからの撤退。上記を考えると、そもそもの派遣の問題点も勘案すれば、良いタイミングだったのかもしれない。だが、大阪の学校事件と同時に幕が引かれたのを見ると、何が起こっているのか、と勘繰りたくもなる。大きな流れが起きているとすれば、一方で何も変わらず相変わらずの経営・行政を進めている我が国に明日はない。

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